SexyZone Live Tour ChapterⅡ 感想

SexyZoneのChapterⅡツアーに参加してきました。

メンバーのパフォーマンスが眩しいくらいキラキラと輝いていて魅力的だったのはもちろん、心をつかまれてしまって、何とかこの気持ちを残しておきたいと思い、数年ぶりにブログを開いています。

 

ツアーのタイトルにもなっている新アルバム「ChapterⅡ」。初めて音源を聴いたときには4人のソロ曲の方向性がまるで違うし、楽曲提供陣が豪華すぎて、これひとつのコンサートとしてまとまるの……? と若干不安に思っていました。

が、蓋を開けてみたら、すごく楽しくて、こんなコンサートをつくってくれるSexyZonのことがやっぱりとても好きだなと思いました。

今めちゃくちゃに忙しいだろうに、メンバーいつ寝てるの。

 

SexyZoneのコンサートは、2017年の5TAGEツアーの頃から、メンバーが出したアイデアを風磨くんがまとめるような形で構成しています。ラジオで本人もお話していましたが、風磨くんは歌詞のつながりをかなり重視してセトリを組むようです。

だから最近のコンサートは、歌詞を辿っていくとゆるやかにストーリーやメッセージが浮かび上がってくるようなつくりになっていました。今回のChapterⅡツアーは、もちろんさまざまな解釈ができる構成ではあるのですが、これまでよりさらに歌詞で辿るストーリー重視で楽曲がつながれていたように感じました。

 

 

過去最高に長い記事になってしまったので、なんとなく歌詞を使って、四幕構成のお芝居のように目次をたててみました。これから、一曲一曲の歌詞を引用しつつ、自分なりにストーリーを解釈してみようと思います。

残すところ大阪公演のみではありますが、ここから先、ネタバレがありますので、ご承知おきください。

 

 

ChapterⅡ

第一幕 We are survivor(オープニング~「My World」

今回のコンサートの舞台は過去の架空のTokyoの街、渋谷。開演直前、不意にステージに追っ手(ダンサーさん)が現れる。

「くそっ…アイツらどこいったんだ」「絶対見つけろ」

 

OP映像。追っ手が探していたのはきっとこの4人だ。

ゲームセンターでチンピラに絡まれてもスタンガンで撃退する佐藤勝利、立入禁止の場所にグラフィティを描いて警備員に追いかけられる松島聡、クラブでお姉さんを口説いて黒服に目をつけられる菊池風磨、敵対する組織(?)に囲まれても華麗に脱出する中島健人

とにかく、この渋谷はずいぶん治安が悪いらしい。この街で生きる4人は、今日もトラブルだらけの日々を過ごし、何者かから逃げ続けている。

 

ダンサーさんのお芝居から入るのが新鮮でした。今回のストーリーの主人公は、SexyZoneとよく似た、このOP映像の4人なのかなと思います。OP映像がとにかくかっこいいし、渋谷を模した遊び心満載のセットも気合が入っていて、今日は絶対楽しくなるなと期待が高まりました

 

逃げてばかりの日々にもそろそろ飽きた。捕まる前に、いっそ行けるところまで行ってみようか? と4人は衝動的に街を飛び出す。

ここでメンステに4人が登場。「BUMP」「Freak your body」「極東DANCE」は4人の逃避行のテーマソング。華やかで衝動的で享楽的なTokyoの夜を駆け抜ける。黒と黄色の鮮やかなセットアップが、夜の街によく映える。

 

We are survivor ほとばしる熱量クセになる

We never stop 衝動とStay together 「BUMP」

Hey!! 戦々恐々?

No!! 一蓮托生 

行くも帰るも知るも知らぬも 天つ風かき分けろ Great escape 「極東DANCE」

 

 

六本木を過ぎてそろそろ東京タワーが見えてきた。メンステからセンステ、バクステまで逃げてきたけど、ここで行き止まりだ。さすがにもう逃げられないかもしれない。

ギリギリまで追い詰められて思い出したのは、少年の頃抱いていた夢だった。そうだ、僕たちはここで終わりじゃない。ここで終われない。

ここがそうだよ叶えろ break down

始まりの場所になんだ

Wow wow 挑んで 何度も 描いて 何度も

 

叶えたいんだよ 少年だった僕らが夢見た未来を

胸に宿る情熱を絶やさぬように 「NOT FOUND」

 

「NOT FOUND」の後半、風磨くんと健人くんが背中合わせで歌うパートがあり、そのあとに風磨くん・健人くんと勝利くん・聡くんがそれぞれ肩を並べて花道を歩く。

衝動的に飛び出してきたけれど、一緒にいたら僕らって最強なのかも!? 背中を預けられる仲間と、肩を並べて歩いていくんだ。ここからもう一度夢を描くんだ。

 

そんなふうに決意した途端、世界が色づく。上を向ける。一緒なら何でもできそうな気がしてくる。新しい一歩を踏み出すのだってもう怖くない。

Let's start to run,run,run right here & now

やっと踏み出せる

To take a brand new step

きっと大丈夫

 

退屈なDays 飛び越えて 

Uh 生まれ変わる

不安なんか無い 

一緒なら Yeah uh

 

見に行こう 希望しかない新天地さ

君の色で染めてしまって

We will know きっと

ここに花が咲くだろう 「Take A New Step」

 

「Take A New Step」は、センステの真ん中が四角形にせり上がって、四方についたプロジェクターの前でメンバーがそれぞれ踊り、その横に他メンバーの映像が映し出される。別々の方向を向いているんだけど、まるで一緒に踊っているような演出。

もしも離ればなれになったとしても、新しい夢を描こうという想いが同じなら、きっと大丈夫。

 

 

 

追っ手から逃れるため夜の街をさまよっていた4人は、ガンバレルーヤのよしこさんとまひるさんが経営するスナックGにたどり着く。踊り子・歌い手として働くことを条件に、匿ってもらうことになる。

 

映像で、踊り子の面接コントがあり、

(大事にされすぎて、ただのデニムの半袖半ズボンを履いている人になっているショギちゃん大好きでした。ナカケンサンバ見たかったよ…涙。ブルーレイでどうかおねがいします!)

 

バブルっぽいミニスカスーツ衣装の踊り子Sexyたちによる「Make You Mine」

そして歌い手Sexyたちによるカラオケ風の「せめて夢の中だけは君を抱きしめて眠りたい」

 

前回のザ・アリーナツアーの80年代アイドルから可憐さはそのままに、より強そうな女たちになっているのが最高でした。どっちもこの演出のための曲なの!? ってくらいハマっていて、Sexyたちものすごくかわいかったけど、だからこそいつか2曲ともかっこよいバージョンも見たいです! 叶いますように!

 

 

4人での2曲のパフォーマンスが終わったところで、「しょう子さん、御指名でーす」(なんとシソンヌ長谷川さんの声!)と勝利くんソロ曲雨に唄えば

 

ワクワクしてきた

僕は無敵ここでは

 

飽き飽きするほど

雨に唄えば

いつかはヒーローになれるはず

同じ夢見てたあの時から

何も変わっていなかったんだ 「雨に唄えば

 

僕たちの少年の頃の夢はこんなふうにステージで歌うことだった。ステージの上なら、僕は無敵になれる気がする。

勝利くん、歌声が本当にまっすぐで、幼い頃の夢を思い出したとき優しくてちょっとだけ寂しい心のなかを、観ているこちらにまで共有してもらったような気持ちになりました。歌声がほんと良い。イントロがなくて勝利くんのブレスから曲がはじまるところも、チェックのセットアップの衣装もとても好き。勝利くんの歌声って、雨の日に似合うんだなと思った。

あとこの曲を聴いて、あのOP映像の4人、マグショットまで撮られていたけれど本当はいい子なんじゃないの…という気持ちになりました。

 

 

続いて、風磨くんソロ曲「My World」

野心を隠さない感じの歌詞なんだけど、このストーリーのなかに組み込まれると、夢のため仲間のために覚悟を決めたひとの曲に聴こえました。アルバムを聴いたときもこういう菊池風磨見てみたかった〜!と思ったけど、コンサートでより好きになった曲です。

風磨くんの佇まいがどこか儚いせいか、声の表現力なのか、パフォーマンスの奥に切実な思いがあるように感じられて、風磨くんじゃないひとが歌ったら全然違う曲になってしまいそうだなとも思った。風磨くんのバランス感覚、すごい。

俺の側なら連れてく Top of the world

 

I am the king and This is my world

炎を胸に、全てこの手に 「My World」

 

仲間と新しい夢を描いて、この世界のトップをとる。覚悟なら、もう決まってる。

暗転。

 

 

 

第二幕 Trust Me like I Trust You(「Trust me,Trust you」~「長電話」)

真っ暗なステージ。風磨くんの覚悟を受け止めるように、その向かい側のバクステ花道から健人くんが静かに現れる。

たしかめるように、一歩一歩あるく。歩みを進めるたびに真っ暗だった床に光の波紋が広がる。健人くんがゆっくりターンすると、魔法がかかったように光が広がっていく。道ができていく。

健人くんの想いに共鳴するように聡くん、勝利くんが左右の花道に登場し、最後にメンステ側に風磨くんが登場する。センステを囲むようにそれぞれ花道に立ち、想いを分け合い、光の道でつながる4人。この演出、「Trust me,Trust you」の歌詞ともリンクしているように感じられて好きだった。

"願い-合い、分け-合い、助け-合い"

「アイ」を足せば

想いは魔法のように動き出すから

 

信じてみたいんだ

誰が何言おうと

暗闇の向こう側に I see the 未来

最後にはきっとそこに美しき世界が

僕らを待ってる

からその日まで

Big Boys & Girls

Don't cry no more

約束の場所へ We go

Baby Trust Me like I Trust You. 「Trust me,Trust you」

友よ 仲間よ

いつかきっとどこかでまた逢おう

語らおう 重なろう だからそう

今はそれぞれの道で戦おう

また会う日が楽しみでしょうがない 「再会の合図」

 

俺がおまえを信じているように、おまえも俺を信じろ。

もっとデカくなって、約束の場所で再会しよう。

 

4人は、もう一度大きな夢を描くためにいったん別々の道でそれぞれ力をたくわえて、約束の場所で再会しようと誓う。「再会の合図」は、リフター→センステで風磨くんと健人くんのラップバトル→バクステで4人が集まって拳を突き合わせてから、一人ひとり別々にトロッコに乗って上手下手に別れてメンステに向かっていく。この一連の流れも、いったん別の道で力をたくわえようというストーリーと重なっているように感じた。

 

仲間たちの声 夕暮れの公園

今もココロん中は変わらないあの日の少年 「Trust me,Trust you」

いつもたまって話した廊下のあの匂いや場面

今も変わらねーでふと思い出す 「再会の合図」

いつもきっといまもずっと ぎゅっと抱いて たまにぎゅっと堪えて

笑いあった横顔思い出して

明日をちょっと待って そう胸を張って

このままゆっくり歩こう 「ぎゅっと」

 

「Trust me,Trust you」「再会の合図」からの「ぎゅっと」

仲間と離れ、それぞれ別の場所で、ひとりでもがく夜。そんなときに心の支えになるのは、これまで仲間とともに過ごした時間。

離れ離れになっても、交わした言葉、一緒に見た景色、笑い合った横顔は消えない。心のなかに残って、今日も僕たちを励まし続ける。今日も、もう少しだけ頑張ってみよう。

 

 

ここでMC。

毎回楽しいお話をしつつ、最後は必ず今それぞれが頑張っている個人のお仕事の話になる。MCまでストーリーとリンクしていて、流れを途切れさせない構成になっているのかなと思った。

 

MC明けは、「みなさんの大切なひとを思い浮かべながら聴いてください」という健人くんの言葉とともに「長電話」からはじまる。

 

泣いたら笑われると思って我慢してきたけど

泣いたら笑ってくれたことも覚えてないけど

あの日からずっと繋がっている そんな長電話 「長電話」

 

もう一回夢を描こうと決めた日から、どこにいても、ひとりでいても、ずっと繋がってる。

 

 

 

第三幕 All I need is Love(「泡」~「Purple Rain」/「本音と建前」)

4人の新しい夢を描くための夜の旅は続く。

「泡」は、4人がゆっくり夜の海のなかを漂っているような、海の底から夜空に浮かぶ大きな月を見ているような演出。

 

月が光る気づけば泡になる

落ちてくの

 

言葉にない事を知りたい

波打つ感情

 

take me take me

手を引いて

夢みたい 夢にしない 「泡」

 

月が大きくて綺麗な夜は、心の奥の感情が不意に溢れてくる。過去も未来も放り投げて、感情と一緒に夜の海を漂う。それでも夢だけは夜の闇の中で光って、僕たちを未来に連れていく気がする。

 

動き出す目の前のpainと

繰り返す度ぼやけていくrainbow

手探りでやり過ごしていくmy way

 

放せないね

どんな君も

さびしくて

やるせなくても

待ったなしの日々を越え

曖昧でいいから

君と僕だけの旅へ

変わらないまま

止まらない夢を見て 「Cream」

 

「Cream」。たぶんきっと、今抱えている感情、痛みも寂しさもずっと消えない。でも、そうやって痛みと寂しさにいつまでも浸っている自分もなんだか愛しく感じる。夏の夜の生温さと少しの騒がしさは、このままの自分でまた夢を描いてもいいのかもと思わせてれる。

「Cream」は正直なところストーリー解釈のなかではよく分からない部分もあるですが、今回笑顔な曲が少なめななか、4人の笑顔が眩しくて、椅子やステッキの演出も爽やかで、なんだかほっとする存在でした。

 

 

ここで聡くんのソロ曲「Turbulence」

 

Ah… 尖る光 照らした闇 曖昧に見惚れた夢

目指す先が残光と 瞬いた幻でも

わかってる覚悟はしてる 強い揺れは訪れる

ひたむきに羽根をひろげ挑め… Turbulence… 「Turbulence」

 

これからどんな夢を描けばいいのか、暗闇の先に本当に約束の場所があるのか不安になる夜もある。でも、揺らぐ姿も全部見せながらひたむきに前に進んでいくのが僕らだ。

 

聡くんは、夜の森で出会った手負いの小鹿みたいな顔をした次の瞬間、覚醒せし闇の破壊者みたいな顔をするので、キレキレのダンスと合わせて本当に目が離せないパフォーマンスでした。

礼儀正しい好青年なのも知っているし、コ。展のHPのプロフィール写真みたいな笑顔に曇りがあるわけじゃないんだけど、OP映像でもこの4人のなかで実は一番怖くて強いのは聡くんなのでは…と思わされるオーラがあったし、夜/闇というワードが一番似合うのも聡くんなのではと思いました。松島聡さん本当に底知れない。

 

 

そして健人くんのソロ曲「ROSSO」。この曲は歌詞だけ読むと、恋が一夜限りで終わっているようにもとれるのですが、健人くんと歌声、パフォーマンスが加わると見え方が変わるように感じました。

 

かんそうさんのブログの以下の部分に、一言一句同意。

www.kansou-blog.jp

「てェェッッッッ……」の声の抜けだけで国家作れる。中島健人は色と恋に溺れ自分がどうなるのか分からない恐怖と快感を完璧に表現している…つまり今日が健国記念日です。は?

たしかに健人くんの声の抜け、完全に天下がとれるやつなんだよな。つまり今日が健国記念日です。は?

 

夜の街のセットのなかで踊る今回のパフォーマンスは、まるでミュージカル映画のワンシーンを見ているようでした。ちょっとした目の伏せ方とか、グラスを持つ仕草とか、健人くんのひとつひとつの所作にはいつも通り引き込まれるんだけど、主役は音楽と歌声が表現している「ROSSO」の世界で、ステージの上の健人くんはその世界の案内人のような。

言葉と音と照明と身体の表現が一体化したパフォーマンスがとてもかっこよくて、「ROSSO」はこれまでのソロ曲のなかでもかなり好きだった。健人くんの演出の曲をもっと見てみたい。早く音が良い箱で生オケで歌ってほしい。(いつかやる前提)

 

Never let go,never

間違った期待はしない。 「ROSSO」

 

途中で赤い手袋をはずす演出があるけれど、「手套を脱す」的な「今までの見せかけを一変して、本来の力を示す」という意味なのかなと思った。

これまでの相手と同じ、仮初の関係だと思っていたのに、あなただけは違う気がする。そんな自分に戸惑う。自分の気持ちも、相手の気持ちも信じていいの? でも今はこのまま一緒にいたい。

 

 

なぜこんなに誰かを特別に想う気持ちに戸惑うのか。もしかしたら、彼らは過去に大切なひととの別れを経験しているのかもしれない。大切であればあるほど、別れの悲しみは大きくなる。

OPからずっと彼らが逃げていたのは、その別れの悲しみと向き合うことからなのかもしれないと想像した。

 

 

健人くんのソロのあとは、ダンスパート。

4人はここで逃げることをやめる。追っ手であるダンサーさんと対峙するようなダンス。そしてダンサーさんと一体となって踊る「Purple Rain」

 

「Purple Rain」は歌い出しが健人くんということもあり、「ROSSO」で出会ったひとのところに向かっているのかなと思った。

 

Give me a reason

迷いはないこのdecision

気がつけば君へと

走らした Romeo 「Purple Rain」

 

戸惑っていたけれど、この気持ちを信じることに決めた。もう迷わない。

「Purple Rain」は、これまで逃げていた過去の悲しみと対峙することで、もう一度ひとを愛する気持ちを受け入れるんだと決意している曲なんじゃないかと思う。

 

健人くんの「気がつけば君へと走らしたRomeo」、勝利くんの「眠らないTOKIO 煌く摩天楼」、聡くんの「手にしたいのはlifeじゃない 焦がれるほどのtonight」、風磨くんの「全て投げ出してでも行くよ」という歌割りが好きすぎて泣ける。全神経を集中させて聴いてしまう。二番の健人くんの「全て投げ出してでも行くよ」との表現の違いも良すぎる。

 

All I need is love

With your heart

全て投げ出してでも行くよ

Will you be right next to me?

 

せめて今この時だけは

Take out all your pain

Purple rain

溶けてく into the dark 「Purple Rain」

 

いま目の前にいる大切なひととも、きっと永遠に一緒にいることはできない。大切であればあるほど、いつか別れることが、失うことがこわい。

あなたも同じ痛みを感じているの? それでも隣にいてくれる?

 

どこかでLonely Lonely Lonely

救いようのないほどの

哀れでもそれでも今夜はdancin' dancin' dancin' 

今すぐ hold me hold me

 

If everything comes by morning

腕の中で眠るように I will call your name「Purple Rain」

永遠なんてないことは分かっていて、それでも今夜だけでも一緒にいたいと祈るような曲。

 

今回、新曲がMC終わりじゃなくて、ここに入っているのも、ストーリーに組み込まれているんだろうなと思いますが、解釈が追いついてないです。でも「本音と建前」は入れるならたしかにここしかない気がする。詞も曲もパフォーマンスも最高で、9月が楽しみすぎるな。

三、二、一、Sexy

最高に満たされてます 裏も表もないです

ごめんねもう全俺が愛だぜ 共犯関係でしょう 「本音と建前」

 

 

 

第四幕 but I'll miss you(「LET’S MUSIC」/「Try This One More Time」~「Sad World」)

前半のコンサートでの「LET'S MUSIC」でも、横アリから加わった新曲の「本音と建前」「Try This One More Time」でもちゃんとつながっているの天才。

 

消えないよずっと 繋がるよ Music

Take your hand, One more time, ひとりじゃないよ

 

明日のことなんて忘れさせて 「LET'S MUSIC」

仲間と超え続ける限界 傷だらけでも探す正解

痛みから変えてく近未来

 

Let's try this one more time again やれるだけ 止めるまで「Try This One More Time」

思うまま 楽しもう 「ROCK THA TWON」

 

4人はトロッコで客席へ。コンサートの定番になりつつなる「LET'S MUSIC」「ROCK THA TWON」のからのHigh!! High!! Peopleという流れで、ここまでの4人のストーリーと、SexyZoneのコンサートへの想いが重なる。

 

いつか別れのときがくることを知っているからこそ、あなたと出会うことができたこの夜を、この瞬間をめいいっぱい生きよう、楽しもう。

 

何度でも 立ち上がれるよ 僕らは ひとりじゃない そう

Dream on Dream on  You!? You!? You!? You!?

 

昨日には戻れないけど 光を探し出して 「High!! High!! People

 

ひとりじゃないから、大きな夢を描ける。強くなれる。一緒に、もう一度もっともっと大きな夢を描こう。

このブログを書くときにセトリを流していて初めて気づいたんだけど、High!! High!! Peopleのラストの聡ちゃんのソロパート、歌詞には明記されていないけれど、「あきらめないで 陽がのぼる」って歌っているのかな。

 

 

メンステに戻って挨拶。

挨拶のラストで風磨くんが、「みなさんと一緒にオレンジの朝焼けを見れたらいいなと思います」というようなことを言う。

会場中のペンライトがオレンジに変わっていく。オレンジ色の光に照らされて、本編ラストの「Sad World」。

 

It's a sad sad World oh 君を思い出す

また去る誰かのため前向く

 

Pains are stacking inside our heart

夜は長いけど 朝日を見るため 走る With u

 

 but I'll miss you 「Sad World」

 

SexyZoneには「Sad World」のなかに出てくる「With u」と同じタイトルの、デビュー前からずっと歌ってきた曲がある。「With you」は、まるで「Sad World」の朝焼けを見たあとの続きみたいに、こんな風にはじまる。

 

夢から押し戻されて 開いたドアからのぞく

曖昧な 景色 朝が来た 「with you」

 

「With you」を歌っていた少年だった5人が一緒に見てきた「ChapterⅠ」の景色、これまでの出会いと別れ、喜びと痛みと寂しさ、それを全部全部、ちゃんと「ChapterⅡ」に、第二章に持っていくからなっていうのが今回のコンサートなんじゃないかと思った。

 

「Sad World」を聴くと「u」はやっぱりマリウスくんの顔が思い浮かぶけれど、それだけじゃなくて、デビューの頃からこれまでに関わったひと、かつてSexyZoneを好きだったけれど、いまはもう離れてしまったひとも含め全員に向けて「With u」って歌っているのかもしれない。

 

朝が来てしまったら、また新しい夢に向かって歩き出さなきゃいけないんだけど、でもやっぱり「I'll miss you」だから、もう少し一緒に朝焼けを一緒に見ていようっていうのがSexyZoneらしい気がする。

前向きな強いところだけじゃなくて、ちょっと後ろ向きな優しくて大切な気持ちを表現してくれる彼らが好きだなと思った。

 

 

 

君の物語は誰にも奪うことはできない

朝まで語り明かした日の

朝日を背に交わし探した希望

眩しいくらいに真っ直ぐにただひた走る少年だった 今は? 「再会の合図」

「再会の合図」のこの部分もお互いに問いかけているみたいですごく好きだったな。「今は?」って聞かれたら、夢に向かって真っ直ぐに走っているのはデビュー当時から変わってないけれど、やっぱり持ち物が増えたよなと思う。大事な持ち物ばかりで、どんどん鞄が重くなってしまうね。

 

振り返るより 昨日悔やむより

前に進む準備をしよう

抱えきれないほどの願い

新しいバッグに詰めて 「Message」

このツアーのストーリー、わりとそのまま「Message」の歌詞だと思うんだけど、どうでしょう?

 

 

これから5人がChapterⅡで紡ぐ物語を楽しみにしています。

 

 

残りの大阪公演、そしてドーム公演まで無事に終えられますように。

長文、最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

Birthday for you

前回の少年倶楽部で健人くんと風磨くんが『Love is…~いつもそこに君がいたから~』という曲を歌った。今までほとんど聴いたことのない曲だったけれど*1、調べたら2006年のKinki Kidsの『I album -iD-』というアルバムに収録されている曲なんだね。このパフォーマンスを、もしまだ見ていない人がいたらダビングするから見てほしいと思う。真っ白なスーツで、まっすぐ前を向いて歌う二人の姿がとにかく素晴らしいのだ。

 

『Love is…』が歌われたのは、3月9日と3月11日に放送された「時」というテーマの回で、歌う前にこんなメッセージが読まれた。

健人:あの時、お母さんのおなかの中にいた君たちはもうすぐ小学一年生になるんだね。あの時、きみたちのお母さんは、涙と一緒に大きな決意をしたんだと思う。どんなことがあってもこの子たちを守る、と。そして願ったのはただ一つ。元気に生まれてきますように

 

「あの時」というのは、東日本大震災のことだ。

7年前の2011年の3月、まだSexyZoneはデビューをしていない。わたしはこの当時の彼らのことをリアルタイムで全然知らないのだけれど、思い出したのは、メンバーのマリウスくんが2014年のコンサートのMCで話していた2011年のこと。

マリウス:メンバーとファンのみなさんへ。僕は今日14歳になりました。思えば2011年4月、東日本大震災の3週間後、まだドイツから日本に通っていた僕。ママと二人でフランクフルトから日本に飛ぶときに税関の人から、『今から子どもが東京へ?絶対にやめておきなさい。今からでもキャンセルしなさい』と知らないドイツ人から言われたことを今でも覚えています。でも僕の心は、どんな状況になっても僕の夢から逃げずに、ジャニーズに入ってみんなを幸せにするんだって、絶対にあきらめない、と決心

していました。そして、行きも帰りの飛行機も、子どもは僕ひとりでした*2

 7年前、おなかに新しい命を宿して大きな決意をしたお母さんのように、デビュー前の今よりもずっと小さな身体に大きな夢を宿して、この夢を絶対に守るんだ、と決意していたのは彼ら自身でもあるのかもしれないと思う。

 

メッセージの続き。

風磨:そして7年が経った今、きみたちが眩しく見えるのは、ランドセルがピカピカだからかな。いや、眩しいのはいろいろな可能性を秘めたきみたちの未来があるからなんだ。さあ胸をはって。僕たちはきみたちと同じようにあの時を忘れない

人:きみたちの力強く、新しい一歩を、祝福します

風磨:この歌に愛をこめて

メッセージの受け手が一気に広がる。このメッセージは、「もうすぐ小学一年生のきみたち」だけではなく、きっとすべての未来のある「きみたち」に贈られている。

 

 

 

今までの健人くん風磨くん二人のパフォーマンスで印象的だったのは、ジャニーズジュニアランドの『欲望のレイン』。これまたKinki兄さんの曲。2人がめちゃめちゃギラギラしていて、「俺を見ろ!!!」というオーラがすごい。それから2012年2月の国際フォーラム「FIRST CONCERT2012」の『ひらひら』。やはりKinki Kids。SexyZoneとして初めてのコンサートで当時17歳の健人くんと16歳の風磨くんは、『ひらひら』を歌った。黒と白のスーツで。わたしはどちらも後から映像で見たのだけれど、なんで2人がこの曲を選んだのか不思議だったのだ。

比較的すぐにJrの中でも人気が出て、そのまま史上最年少グループとして華々しくデビューを飾った人たちが、なぜこんなに悲しい曲が似合うのか、なぜどうにもならない喪失の予感の曲を歌うのか、わからなかった。

かじかむ手を空にかざし 太陽をなでた

君のいいとこ想い出しては だぶらせたりした

この坂でキスしたっけな 春の終わりに

別れの合図と気付いてしまった 嗚々嗚々

引ずって 打たれて それでも 唄ってしまう

形のないもの全て 壊してしまいたい

君が云った愛してるよも今じゃ ひら ひら ひら 

Kinki Kids『ひらひら』

太陽にむかってかざした指の間からひらひらとこぼれ落ちてしまう大切な記憶、信じていた未来への愛の誓い。「ソラニカザシタテノヒラ」から始まるデビュー曲との符合も、少しだけ皮肉な感じがした。あのときの2人は、「なくしそうな愛ほど人を壊せるくらいに美しい」「形のないもの全て壊してしまいたい」と歌うのが似合っていた。

 

 

 

それから6年経った二人は『Love is…~いつもそこに君がいたから~』を歌うのがとても似合っていた。『欲望のレイン』や『ひらひら』があんなに似合っていたのには、グループを取り巻く環境とかいろいろな要因があったんだと思うけど、今『Love is…』が似合う理由は、 SexyZoneとして過ごしたこの6年なんだよなとおもう。

ここにある僕の気持ちをずっと大切にしていきたいよ

体中で感じた答えは 手を繋ぎこの道を歩くこと

探してたずっと前から 終わることない愛のカタチ

君がくれた言葉の意味さえ 上手くわからずに 傷つけたけど

 

こんなにも誰かを愛しく思えること 何よりも誇りに思うから

君を支えたい いつも君の側で 愛はいつでもこの胸の奥で

 

Love is…for good こんなに優しくなれたのは 君がいたから

Love is…for all その笑顔が見たいから そこまま側にいさせて

Love is…because 気づけばいつのまにか 近くに感じていた

Love is…believe  忘れないさ いつの日も 心に愛を届けよう

Kinki Kids『Love is…~いつもそこに君がいたから~』

健人くんと風磨くんが、いまここで伝えたいのは、いつか終わりがあることを知ったうえで、それでも誰かを大切に思う勇気みたいなものなのかな。

それで、その伝えたいメッセージを、アイドルの自分たちが伝えることに意味があると思っているんじゃないかな。ふまけんはいつだって、2人が揃うことで生まれるパワーを、それから最近はSexyZoneが5人揃うことで生まれるパワーを誰よりも信じているように見える。2人は正反対なことばかりだけれど、アイドルの力を誰よりもまっすぐ信じているところはそっくりだ。

去年のコンサートの健人くんのあいさつが本当に好きだった。

健人:厳しい現実が俺たちの夢を壊すことも今まであったかもしれない。当然みんなにも、悔しい思いをしたり、寂しい思いもしたり、たくさんあったよね。でも、これからも、厳しい現実が夢を壊すことがあるんだったら。今度は俺たちとみんなの大きな夢が厳しい現実を壊してもいいんじゃないかなって思います

現実が夢を壊すなら、何度でも夢を描き直そう。悲しいことがあっても、これから一緒にハッピーエンドを書き足そう。

風磨くんが今年新聞のインタビューで言っていた言葉が重なる。こういうことをはっきり言ってくれる風磨くんが好きだな。

「例えば日本が災害に遭った時にパフォーマンスをしたら皆に元気を与えられるような、影響力を持つナンバーワンのグループになりたいです」*3 

去年のサマパラで、マリウスくんが披露した『そばにいるよ』の英語verがすばらしくて、この人がいたら本当にSexyZoneはナンバーワンになれるのかもなあと思った。これはその英語詞をマリウスくんがさらに日本語訳したもの。

自分自身のままでいられないとき

あなたのことを心から愛しているわたしのような人が常にいる

星が見えない夜には自分が星になればいい

分自身を引き離さないで

あなたはあなたのままでいて わたしはわたしのままでいる

「わたしのまま」でアイドルっていう存在をどんどん進化させてくれそうなマリウスくん、まだ17歳。愛してる。 

 

今日は3月生まれの3人の話ばかりしたけど、勝利くんも聡ちゃんも好きなんだよなー。5人とも好きです。アイドルのパワーをめちゃめちゃに信じている5人のつくるものをこれからも見たい。

 

一歩踏み出したい人の背中を押すんじゃなくて肩を組んで歩く昔からの友人のような。 

悲しみで立ち上がれない人に優しく力強く手を差し伸べるスーパーヒーローのような。

つらい現実を忘れるくらいの圧倒的な美しさで人を幸せにするトップスターのような。 

今日も素敵なアイドルでいてくれてありがとう。

菊池風磨くん、23歳のお誕生日、おめでとうございます。

中島健人くん、24歳のお誕生日、おめでとうございます。

マリウス葉くん、もうすぐ18歳のお誕生日おめでとうございます。

 

このブログ読んでいる人でSexyZoneのアルバム買っていない人ってほどんどいないと思うのだけど、もしも!もしもまだもっていない方がいたら、最新アルバムほんとうによいのでぜひ聴いてみてください。このエントリのタイトルにもしたスーパーSexyハッピーソング『Birthday for you』も入ってるよ!特典映像つきのABも良いんだけど、今回はメンバー作の曲が入った通常盤がおすすめです。ぜひぜひぜひ! 

XYZ=repainting(通常盤)

XYZ=repainting(通常盤)

 

 

 

 

*1:って書いた後にたまたま二年前の風磨くんのソロコン『風 is a Doll?』つけたら半澤くんと増田くんが歌っていた!

*2:2014年3月のコンサートのMCでマリウスくんのお誕生日を祝うサプライズへのお返しとして読まれた手紙の一部

*3:讀賣新聞』2018/2/12

佐藤勝利くんとジャニーズ・マスト・ゴー・オンの話

 

約二年前の五月に友人のつくっている「継承」をテーマにした批評同人誌に、『ジャニー喜多川なき世界に向かって -ジャニーズ マスト ゴー オン-』という文章を載せてもらいました。このブログで宣伝もしました。これですね。

chocomintholic5.hatenablog.com

 

先日Twitterを通じてこちらの購入希望のリクエストをいただき大変嬉しかったのですが、ずいぶん前に書いたものにお金を払っていただくのがなんともしのびなくて、タイミングをみてブログに載せますね~!とお約束したまま、半年が過ぎようとしています。(土下座)

 

ここ一年ほどは、ジャニーズという事務所をめぐってさまざま出来事があり、このニュースが出たタイミングでこの内容はちょっとどうかな…と躊躇しているうちに、気づいたら半年経っていた次第でして。(いいわけです。すみません。土下座)

 

で、なんで今この記事をアップしようとしているかというと、二日ほど前に健人くんのソロコンについて感想記事を書いていたところ、SexyZoneの絶対的センター佐藤勝利くんがソロコンサートの初日で

「僕たちSexyZoneがジャニーズを永遠にしていきます」

 と語ったという話を聞きまして、え、それ私が二年前に妄想してたやつでは…と驚愕したからです。そして、リクエストをいただいたのに、半年放置していたことも思い出しました。

おーい!二年前のわたし!勝利くんジャニーズを永遠にするってよーーー!!

 

前置きが長くなってしまうのですが、これを書いた当時、ジャニーズを好きになって一年くらいで初めて『ジャニーズワールド』を観て衝撃をうけ、ジャニーズおよびジャニー喜多川の素晴らしさと興味深さと恐ろしさについて、とりつかれたように毎日ひたすら考えていて、そこで出た結論が「ジャニワとは、佐藤勝利がジャニーズを永遠にする物語である」というものだったんですよね。あとは、大好きなSexyZoneが流動化とか訳のわからないことになっており、いやいやSexyZoneは絶対に五人です!!ジャニーズを永遠にするために五人が必要不可欠です!!っていうことを書きたかったという気持ちもありました。



まあ勝利くんの発言について、「わたしは二年前から予測してたぜへっへん」とかいう気持ちよりも、なんかこのわけのわからん長文を公開するタイミングは今しかないのでは…という気持ちでおります。

何より、今年は勝利くんのソロコンもう観られなさそうだなとあきらめかけていたところ、同行させていただけることになり、明日勝利くんのステージを観たら、こんな文章は永遠に葬りたくなるのではないかと思ったので、観る前にアップします。(土下寝)

 

先に目次を載せておきます。長いので、気になったところだけ読んでいただいても。リンクするやつはごめんなさいやってません。

1 ジャニーズにとって「継承」とは

2 ジャニーズミュージカルと「Show must go on」

3 劇場型人材育成システムとしてのミュージカル

4 堂本光一中居正広と「Show must go on」

5 ジャニーズ文化の成熟とジャニーズニュータイプたち

6 佐藤勝利という光

7 ジャニー喜多川なき世界に向かって 

 

 

二年以上前に書いたものなので、現在と食い違っているところがかなりあるかと思いますが、きりがないので基本的には誤字等の修正のみしております。ちなみに注も紙ベースのときのままです。

ブログ用に書いたものではないので、文体がアレですが、「ジャニーはどのような思いを託しているのか…」とか言ってるの、これはこれでちょっと面白いのでこのまま載せます。そもそも、こういう目次の中に載っけてもらってたこと自体ちょっとおもしろいんですけどね。なんか、こういうオタクもいるんだなあくらいの生暖かい目で読んでいただけたらと思います。

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あらためて最後に、SexyZone流動化が危ぶまれた時期のことやSMAPのことなど、センシティブな話題に触れている部分もありますので、ご注意ください。

 *以下からが本文です。

 

*********************

 

 

先日、某女性アイドルグループファンの友人と飲んでいたときのことである。ジャニーズアイドルグループSexyZoneのファンである私は、事務所の格差売りがいかに酷いものであるか、Sexy鬱*1の現状を友人に一方的に訴えていた。しばらくは黙って聞いてくれていた彼女だったが、突然、私の話を遮り次のようにブチ切れた。「ジャニーズはデビューしちゃえば、毎年大きな会場でコンサートやって衣装もセットもお金かけてもらって毎月テレビも雑誌もあって、これ以上何が不満なわけ?そんぐらい我慢しろや!!」このあと彼女は、煙が立った程度の恋愛スキャンダルでこれまでの地道な努力が水の泡になった推しメンの話、卒業という制度がいかに残酷なものか、ものすごい熱量で語ってくれたのだった。

 

 

 ジャニーズにおける「継承」とは

女性アイドルと比較すると、確かにジャニーズタレントは恵まれていると言える。『文春』のメリー喜多川独占インタビューで本人の口からも語られたように彼女のマネージメント力、ジャニー喜多川のコンテンツを生み出す力は、ジャニーズ事務所にタレントを守るための大きな力を与えてきた。半世紀も男性アイドル市場を独占的に支配する例は世界でも他にないのではないか。

現在ジャニーズにおける最注目の「継承」問題と言えば、御年八十八歳と八十三歳の喜多川姉弟の跡を誰が継ぐのかということだろう。SMAPを現在の地位にまで育てた飯島マネージャーと、メリーの娘で嵐を担当するジュリー喜多川。マネージメント面、つまりメリーの後継者は、この二名のどちらかだろうと目されている。一方でジャニー喜多川が担当してきたコンテンツ面は誰が引き継ぐのか。ジャニー喜多川の独特のセンスと、ダイヤの原石を見抜く才能がなければ、ここまで巨大な事務所にはならなかっただろう。

本稿では、ジャニー喜多川がジャニーズタレントに「継承」させてきたのは「Show must go on !」精神であるとし、それがいかにして「継承」されてきたのか、またそう遠くない未来に予想されるジャニー喜多川なき世界で、いかにジャニーズが「継承」され得るのかについて考えてみたい。

 

 

ジャニーズミュージカルと「Show must go on」の意味するもの

 ジャニー喜多川が最も力を入れている活動はミュージカル制作であると言われている。少年野球団だった「ジャニーズ」が芸能事務所となったのは、ミュージカルを映画化した『ウエスト・サイド・ストーリー』がきっかけだったことはすでに指摘されている通りだ*2

事務所の立ち上げ時から半世紀が経った現在でも、脚本・演出・プロデュースすべてにジャニー喜多川の名がクレジットされた舞台が毎年何本も上演されている。今年一月の『二〇一五新春ジャニーズワールド』の期間中は、ほぼ毎日帝国劇場でジャニーの目撃情報があったほどの熱の入れ具合である。

 よく比較される宝塚やAKBと違い、ジャニーズは専用劇場をもっていない。だが、帝国劇場、新橋演舞場東京グローブ座などは、年間の半分近くがジャニーズの舞台で使われており、御用劇場となっているのが現状である。

ジャニーズミュージカルの特徴と言えばまず「役名=タレント名」であることが挙げられる。堂本光一が「コウイチ」役を演じ、中島健人が「ケント」役を演じる。また、『EndlessSHOCK』や『PLAY ZONE』など、「舞台をつくること、ステージに立つこと」がテーマになっている作品が多い。つまり、ストーリー内の役どころと、実際に舞台に取り組むジャニーズタレント自身の姿とを、ファンが二重写しで観ることが前提となっているのである。これらの舞台のストーリーの中で重要な役割を持つのが、「Show must go on!」という言葉だ。「何が起こってもショーを中断してはならない。」ショービズ界ではしばしば使われてきた言葉だという。時代・演目を超えて繰り返されるこの言葉に、ジャニーはどのような思いを託しているのか。

 

 

 

劇場型人材育成システムとしてのミュージカル

近年ジャニーが最も力をが入れていると言われる『二〇一五新春ジャニーズワールド』(以下ジャニワ)を例にして、ミュージカルにおける若手ジャニーズ育成システムについて考えてみたい。

 「ジャニワ」の大まかなストーリーは以下のようなものだ。

 

ミュージカルカンパニーの一員である(佐藤勝利演じる)「勝利」と(中島健人演じる)「健人」。ある日ショーのフライング中に「勝利」がセットに衝突する事故に遭ってしまう。「これ以上ショーを続けられない」と言う勝利に対し、ショー作りに心血をそそぐ(錦織一清演じる)「プロデューサー」は「Show must go on!」と説く。「プロデューサーは狂ってる!」と文句を言いながらも、一緒にショー作りを続ける二人。プロデューサーは、今までにない新しいショーを作るために二人を連れて人間の暦を越えた「十三月」を探す旅に出る。

 

この「十三月」を探す旅は、一月のジャポニスム満載の和楽器ショーから始まり、タイタニック号沈没のシーンの寸劇、ヒンデンブルグ号事件、第二次世界大戦、オリンピック、十二月の源平合戦まで、月ごとに次々に場面が変わっていくレビューのようなものだ。くわしい意味付けはここでは割愛するが、プロデューサーのこれまでのショーのアイデアを集めたものだと考えられる。つまり、ショーの歴史をたどる旅でもあるのだ。重要なのは、ジャニーを彷彿とさせる狂気のプロデューサーがこの旅で「勝利」と「健人」に何を伝えたかったかである。

旅の中で「勝利」には、「生きることの意味とは…」「生きるって何なんだ」という台詞が与えらてれており、「健人」には「やっと分かりました!狂気の意味が!挑戦と冒険こそがショーを作るんですね!」という台詞が与えられている。このことから「勝利」は「生きること」を、「健人」は「ショーを作ること」をそれぞれプロデューサーから学び取る存在であると考えられる。

この二人が旅の中で悲劇ばかりを描くショーに絶望し、傷つけ合い、悩みながらも、理解し合うようになる様を描くことで「ジャニワ」は、「生きること」と「ショーを作ること」の関係性を描いているのだ。物語の終盤、二人ががっちりと腕を組み、シンメトリーなポーズでフライングする見せ場は、まさに「生きること」と「ショーを作ること」が表裏一体であることを象徴しているのだろう*3。このように考えたとき「Show must go on!」という言葉は「生きるためにショーを作り続けなければならない」「生きている限りショーを作ることから逃れることはできない」という意味も持つことになる。プロデューサーが「勝利」と「健人」に試練を与えて一人前にしていくというストーリーに、舞台裏でジャニーが佐藤勝利中島健人に稽古をつけているさまを、観客は重ねる。

「Show must go on!」という言葉は、ジャニーズとして、アイドルとして、どのように生きるべきかを説いているのである。

 

結局「十三月」が一体何なのかは明かされないまま、プロデューサーが唐突に「十三月はみんなの心の中にあったのだ!」と言い出し、その答えに一同が納得して大団円を迎えることが、「ジャニワ」のトンチキ舞台たるゆえんだ。結末が意味不明だからこそ、過程が輝く。「勝利」と「健人」が「生きること」と「ショーを作ること」の関係性に悩み、プロデューサーから必死に学び取ろうとするその過程を観客と共有することこそ、この舞台の肝なのだ*4。役とタレントをダブらせ、ストーリーを入れ子構造にすることで、劇場型人材育成システムとしてミュージカルが機能しているのである。ミュージカルに抜擢された若手ジャニーズにとって「Show must go on!」はジャニーからの教えであり、アイドルとして活躍すべき未来への道しるべとなるのである。

 

 

 

堂本光一中居正広と「Show must go on!」

ジャニーズタレントはさまざまな機会にジャニー本人、またジャニーの指導を直接受けた先輩ジャニーズから「Show must go on!」精神を「継承」するのだろう。例えば、KinkiKidsの堂本光一は舞台中心、SMAP中居正広はテレビバラエティ中心と、それぞれまったく別の方針で活動しているように見える。しかし実は二人とも「Show must go on!」を背負っている。

堂本光一は二〇〇〇年から『SHOCK』というミュージカルの座長を務め、今年で十五年目になる。ミュージカルカンパニーを率いる「コウイチ」が仲間とぶつかりながらも人生をショー作りに捧げるというストーリーの作品であり、観客は座長としてストイックに舞台を作り続けていく堂本光一と「コウイチ」を重ねて鑑賞する。この舞台の見せ場は、何といっても五メートルもの高さからの階段落ちだ。カンパニーナンバー2の「ヤラ」は、「コウイチ」への反発心から、劇中のミュージカルシーンの小道具である日本刀を本物の刀にすり替えてしまう。殺陣の演技の中で重傷を負い、「ヤラ」の企てに気付きながらも、「コウイチ」は自らが信じてきた「Show must  go on!」精神にのっとってショーを続け、脚本通りに階段落ちを決行することで命を落とす、というシーンである。

ジャニーズの舞台は、役名やストーリー設定により現実と虚構の世界を交錯させる仕組みになっているというのは先述した通りであるが、奇しくも今年の三月十九日の『EndlessSHOCK』昼公演で、虚構が現実化したような事故が起きてしまった。八百キロもの重さがあるセットが突然本番中に倒れたのである。負傷者数名が救急車で運ばれ、その日の公演はそのまま中止となった。幸い、負傷者全員がその日のうちに退院でき、セットも別のものに代えることができたため、翌日から公演続行となった。千穐楽のカーテンコールで、座長堂本光一は次のような挨拶をした。

 

(前略)翌日から再開することには批判もあるかもしれないと思いましたが、僕は覚悟の上で再開しました。あの事故の翌日、大道具の棟梁さんが僕のところに来て「頑張りますから」と仰って、グッときました。僕たちは言葉でなく、パフォーマンスで全てを表現していこうと決めたんです*5

 

この事故により露呈したのは、「Show must go on!」を強いることの残酷さだ。この挨拶から、堂本はショーを続けることが必ずしも賞賛されるべき態度でないと認識していることが分かる。本番中ケガをする可能性が最も高いのも、ショーを続けることの責任を負うのも、舞台に立つ堂本本人だ。死者が出ていた可能性。堂本自身が重傷を負っていた可能性。ショーのストーリーのような悲惨なことが実際に起こり得る現実を引き受けて、座長として舞台に立つ。その「覚悟」を持たせるのが「Show must go on!」という言葉なのではないか。劇中、階段落ちの後に幽霊となってカンパニーに戻ってきた「コウイチ」が「ヤラ」に次のような言葉をかけるシーンがある。

 

オレたちは一つ苦しめば、一つ表現が見つかる。一つ傷つけば、一つ表現が作れる。ボロボロになれば、そのぶん輝ける。だからお前がショーを続けたことは正しかったんだ。

 

堂本は、事故の翌日、長年『SHOCK』カンパニーの一員として彼を支えてきた福田悠太ら後輩のところに来て「僕たちは舞台に立つことしかできない」と言ったという。『SHOCK』は堂本光一が人生をかけてショーを作り続ける場所であり、同時に、舞台に立ち続けることによって人生をかけた「覚悟」を見せ続ける場所なのである。このような座長の背中から、後輩たちも「生きること」と「ショーを作ること」の関係性を学び取る。

「Show must go on!」精神ゆえの「覚悟」を背負っているのは中居正広も同じだ。二〇一四年三月に放送された『笑っていいとも』の最終回スペシャルで中居はタモリへの手紙の中で次のように語った。

 

歌の世界っていうのは、いずれかライブとかやれば最終日があって。ドラマもクランクアップがあって。映画もオールアップがあって。なんか始める時にその終わりを、ゴールに向かって、それを糧にして進んでいるんじゃないかなって思います。でもバラエティは終わらないことを目指して進むジャンルなんじゃないかなと。覚悟を持たないといけないジャンルなんじゃないかなと。(中略)他のジャンルは、評判が良かろうが悪かろうが終わりがあるんですけど、バラエティってゴールがないところで終わらなければならないので、こんなに残酷なことがあるのかなと思います。

 

SMAPといえば、それまでジャニーズタレントからは敬遠されていたバラエティに挑戦することで国民的アイドルとしての地位を獲得したグループだ。特に中居は有能な司会者でありながら、アイドルで居続けるという特異な存在となった。四十歳を超えてアイドルとして第一線で活躍し続ける例は、SMAP以外に見られない。タモリが総合司会を務め、『笑っていいとも!』をベースに放送された二〇一二年の『二十七時間テレビ』では、メンバーの草なぎ剛が百キロマラソンに挑戦し、見せ場の一つとなっていた。SMAPも、アイドルとしてどこまで走れるのか、先導者もゴールもないマラソンを続けているようなものではないか。彼らの、人生をかけた過酷なマラソンにチャレンジする姿に、私たちは尊敬なのか同情なのか分からないけれど、とにかく心が動かされてしまう。卒業のないジャニーズは女性アイドルとは別の、ゴールがないという過酷さを背負っているのである。

舞台に立ち続けること、アイドルで居続けることで背負う覚悟、その過酷さを思うと、「Show must go on!」とは未来への道しるべであると同時に、ジャニーがタレントたちにかけた呪いのようなものに思えてくる。

 

 

ジャニーズ文化の成熟とジャニーズニュータイプたち 

ジャニーが育んできたジャニーズとしての精神は、どのように「継承」されているのだろうか。まだ無名のジャニーズJrたちは、コンサートでデビュー組のバックダンサーを務めたり、先輩ジャニーズ主演のドラマに端役として出演したりしながら、先輩の背中を見て学んでいくことが多いのだろう。Jrや若手グループが『少年倶楽部*6やアイドル雑誌のインタビューで必ず聞かれる項目に「尊敬する先輩(ジャニオタ用語で「尊先」)」というものがある。ジャニーズ内で目標とする先輩を公式的に明言することで、ファンとも共有しつつ、先輩から後輩への「継承」が続いていく。近年、このようなシステムの中に新しい「継承」のかたちが生まれている。なんとジャニーズ内部にジャニオタが紛れ込んでいるのである。

SexyZoneはメンバー内ジャニオタ率が特に高いグループだ。最年長の中島健人は、小学六年生の時に亀梨和也山下智久のドラマ派生ユニット「修二と彰」の『青春アミーゴ』でジャニーズに憧れ、自分と同世代の山田涼介(Hey!Say!Jump!)の活躍を見て自らジャニーズ入りを決意したという。山田との共演時には山田を慕う他の後輩を牽制するなど、強火山田担(熱心な山田ファンのこと)の姿そのものだ。先日も先輩である中山優馬のラジオ「LOOK AT YOU-MA」にファンのように感想メールを送り、驚いた中山が「いろんな人のラジオ聴いたりテレビ観たり、勉強熱心なのかなんなのか」とコメントしていた*7。ラジオだけでなく、先輩ジャニーズ出演のドラマも毎クールほぼ網羅して観ているようだ。大学と芸能活動の両立で多忙な身にも関わらず、ここまで熱心にチェックできるのは、ジャニーズに対する愛情の強さゆえだろう。同メンバーの菊池風磨もジャニーズに入ったきっかけは、小学二年生のころから「嵐にあこがれて」だと語っているし、松島聡も同じ静岡県出身の知念侑李(Hey!Say!Jump!)に憧れており、「気持ち悪いくらい好き」「1にファン、2に家族、3に知念くんが大切」などと発言している。このような態度はこれまでの「尊先」の枠を越えたものだろう。松島に至っては、先日も雑誌で「疲れた時の回復法」として「ライブのDVDを観ること。自称〝ジャニオタ〟の自分としては(笑)」*8と自ら「ジャニオタ」であることまで明言している。

ジャニーズ内にジャニオタがいるという事態は、今までは考えられなかった。中島・菊池世代、つまり二十歳前後よりも前にジャニーズに入る少年たちは、他者から見出されてジャニーズになった者がほとんどだ。ジャニーズ入所のきっかけを聞かれると、たいてい「知らない間に姉(母、親戚…)が勝手に履歴書を送っていて…」と答える。自ら進んでジャニーズになったわけではない者が全員アイドルである自分とうまく折り合いをつけられるわけではない。「人類の奇跡」と呼ばれるほどのルックスを誇る山下智久はインタビューで「カメラの前に立っても、面白くもないのに笑えなかった」と過去の自分を振り返っている。「アイドルである」「ジャニーズである」ことへの葛藤を表明するジャニーズタレントは山下だけではない。それがグループ脱退や退所という形につながることも少なくなかった。そのような葛藤を小説という形に昇華させたのが加藤シゲアキの『ピンクとグレー』ではないだろうか*9。加藤の所属するNEWSは、結成時九人だったのが、メンバーの脱退が続いたことにより、現在は四人で活動している。脱退したうちの一人が、山下だ。本作の中で、タレントとしての自分と「本当」の自分との乖離に悩み、人気絶頂期に自死を選ぶ「蓮吾」の姿は、山下のようなジャニーズタレントの姿と重なるところがある。矢野利裕は本作について、「蓮吾」が遺書を複数用意し、どれが公開するのにふさわしいかを親友の河田に選ばせる点にこそ「アイドルという存在の本質が示されている」とし、「本当の自分すらも受け手に委ねる、アイドルはそのようにしか生きられない、ということである。この点に作者の、アイドルとしての覚悟を感じた。」と述べる*10。現在二十代後半の山下・加藤世代のジャニーズタレントにとって、アイドルである自分を受け入れることは、「覚悟」が必要なことだったのである。

それに対し、先述したジャニオタ集団SexyZoneは、ジャニーズのニュータイプと言える。「顔がカッコよかったから」というだけではなく、「ジャニーズアイドルになりたい」と思って入所してくるのだから、芸能界の厳しさを味わうことはあるだろうが、山下・加藤世代が抱えていたような葛藤はずっと少ないはずである。それは内面の問題だけでなく、ステージ上の振る舞いにも表れる。ステージでの立ち位置がシンメトリーな二人のことを、ジャニオタ用語で「シンメ」と呼んでいる。人気の高い者同士が組まされることが多く、立ち位置を決めるのはタレント自身ではないため、プロデューサー側から勝手に与えられるものだ。したがって仲間意識のようなものが生まれこそすれ、これまでタレント本人に「シンメ」を売りにする意識は薄かった。ファンはパフォーマンスや漏れ伝わるプライベートでの関わりなどからそれぞれの「シンメ」の関係性を想像し、ときには妄想して楽しむものであった。そのような「シンメ」制度とファンのあり方もニュータイプたちは更新していく。Jr時代からデビュー後の現在まで中島と菊池も「シンメ」である。二人はジャニオタ同士だけあって、意識的に「シンメ」であることを売りにして人気につなげるような振る舞いをしている。ファン以上に本人たちが「シンメ」であることに陶酔しているのである。

 

中島:風磨とは運命的なものを感じてたよ。“このコとは何かある。この先、長い付き合いになるな”っていう。よく「結婚する相手に出会うとビビビっとくる」みたいなこと言うじゃん。そういう予感っていうやつ?*11

 

中島:風磨がステージに飛び出すその瞬間、俺に向けられた拳。Jr時代からつづいている、ふたりだけの儀式。思い返せば風磨からは、初めてだったかもしれない。うれしかった。やってやろうと思った*12

 

菊池:暗黙の了解というか、普段の生活で一緒にいるときもステージに立っているときも、だいたい分かるよね、中島の考えてることは*13

 

中島:最近風磨との運命を感じる。もちろんメンバーには運命を感じるけど、風磨にはそれ以上。この先、どんなことがあっても隣にいるんだろうなぁって。ライバルとか友達ではなく一緒に戦う同士っていう感覚*14

 

中島:風磨とだったら、ふたりにしか生み出せない“何か”が見える気がして。誰も手が出せない何かが絶対にあるはず。

菊池:僕が本気で何かをやろうと思ったとき、必要なのは誰かって言ったら、中島しかいないんだ*15

 

 

まるで青春ドラマの台詞のようだ。これらは、中島・菊池シンメがナチュラルかつ定期的に供給してくれるシンメポエムの一部である。もちろんステージ上での背中合わせ歌唱やハイタッチなどは、「シンメ」の絆を感じさせる行為として当然ファンを喜ばせる。このような発言はより一層ファンを喜ばせるものだ。思春期を経て二人の関係は変化した部分はある。だが、この中島・菊池シンメは今にいたるまで、「シンメ」としての「運命」を誰よりも自分たち自身が信じているように見える。たまたま入所時期が近かったために組むことになった「シンメ」。その偶然を「運命」だと読み替えて、「オレとアイツ」の世界観を作り上げる才能が二人にはあったのだ。ファンを喜ばせるための振る舞いや発言に、彼ら自身がファン同様に興奮している様は、さらにファンを喜ばせる。SexyZoneの場合、コンサートなどでこのシンメがシンメらしい振る舞いをする度に、もう一人のジャニオタ松島が「こりゃーふまけん(風磨と健人シンメのジャニオタ内の愛称)ファンはたまらないね」とさらにジャニオタ用語でトークを展開するのである。

他のグループに比べて入所からデビューまでの期間が圧倒的に短い彼らは、ルックス・歌唱力・ダンスなどの才能以上に、ジャニオタ目線でファンが喜ぶような自己プロデュースができることが見込まれたのではないだろうか。このようなジャニオタの心がわかるジャニーズが増えているのは、SNSなどでファンの声を直接タレントが目にする機会が増えたこともあるだろうが、何よりジャニーズという文化の成熟の証なのではないだろうか。

ジャニオタ精神を持ち合わせたジャニーズJrも増えている。デビュー最有力候補である神宮寺勇太(十七歳)と岩橋玄樹(十八歳)も「シンメ」としての見せ方に意識的だ。雑誌で「シンメとしての動きを学ぶためにSexyZoneのコンサートDVDでふまけんを研究している」というような発言をしている。さらにお姫様抱っこやほっぺチューなど恋人同士のような身体接触・発言をすることを喜ぶジャニオタが増加していることをうまく利用して、より多くのファンを獲得している。岩橋はアイドル雑誌『Myojo』で毎年行われている「Jr大賞」の「恋人にしたいJrランキング(つまり実質の人気投票)」で二年連続で一位を獲得するまでになった。しかし一位を記念する誌面に、なぜかウエディングドレスを着て、タキシードの神宮寺にエスコートされる姿で登場したのは、ジャニオタの予想を超えていたのではないか。岩橋がすごいのは、恋人にしたいランキング一位の男性アイドルが女装をするという倒錯をジャニオタ以上に、本人が楽しんでいるように見えるところだ。ジャニオタの勝手な欲望にさらされることをさらっと引き受け、さらにその欲望の上を見せてくれる。今後は彼らのようなJrが増えていくのだろう。

 数多くの少年たちの中から「シンメ」を見出し、ユニットを作り出すのは、長らくジャニー喜多川のみに許された仕事であった。時に本当に仲の良いチームを解体したり、未来を約束し合った者同士を引き裂いたりと、少年たちの「運命」を握るのはジャニーただ一人であり、ジャニーズタレント・ジャニオタはその仕事ぶりを信頼しつつも、指をくわえて見つめているしかなかった。しかし、SexyZoneやそれに続くJrたちは、ジャニーがこれまで一方的に押し付けてきた「運命」をも自ら信じ、より強固な自分らしいものにしていくことができる。またさらにそこに、ジャニオタの欲望をふまえた一段階レベルの高い表現で応えていく。AKBの指原莉乃が女子アイドルオタクであるがゆえに、ファン心理を巧みにつかみ、自己プロデュースのみならず、後輩アイドルのプロデュースにも成功していることはよく知らているだろう。ジャニーズにおいても今後、指原的な才能を発揮する者が出てくるのではないだろうか。

 

 

佐藤勝利という光 

「スペオキ」というジャニオタ用語がある。これはジャニーの「スペシャルお気に入り」の略で、堂本剛中山優馬らがそれに該当すると言われている。「スペオキ」は、ジャニーから特別扱いされるだけでなく、活動歴やファンからの知名度に関わらず仕事面でも優遇される。現在一番推されている「スペオキ」は、「YOUは特別かっこいいよ」とジャニーに太鼓判を押され、入所一年未満にも関わらずグループのセンターとしてデビューした佐藤勝利だ。佐藤はデビュー前に、他のメンバーが呼ばれていない会議にタレントとして唯一呼ばれ、ジャニーと二人でデビュー曲のカップリングを決めたという。この曲のサビは次のような歌詞になっている。

 

見つけたんだ 小さな光 未来へ with you with you (中略)求めてた希望のかけら

(『With you』)

 

 

この歌詞に当時のジャニーの気持ちを重ねてしまうのは、乱暴過ぎるだろうか。だが、ジャニーがこの曲に佐藤への特別な思いを込めていたのは間違いないだろう。ジャニーがオーディションで佐藤勝利を見つけた二〇一〇年はジャニーズ事務所にとってどのような時期だったのか。まずは二〇〇〇年代後半からデータ・ダウンロードが増えたことによる、CD全体の売り上げ数の圧倒的な減少。KinkiKidsやKAT-TUNが自ら主演したドラマの主題歌でミリオンヒットを飛ばしていた一九九〇年代後半~二〇〇〇年代前半からは信じられないほど、CDが売れなくなった時期である。さらにEXILEの弟分として三代目J Soul Brothersを結成されたのも二〇一〇年である。つまり、ヒットが出にくい上に強力なライバル事務所の影が迫りつつあった時期なのである。

ジャニーにとって佐藤勝利はスペオキ以上に、ジャニーズ黄金期を再来させるための「希望のかけら」だったのだ。佐藤はジャニーの言葉通り、誰もが認める圧倒的美少年である。そしてその佐藤の所属するグループこそジャニーズ内ジャニオタ率№1のSexyZoneだ。ジャニオタ目線の自己プロデュース能力に長けた中島・菊池・松島に加え、強力な五人目のメンバーであるマリウス葉は、ドイツ出身で母親が元タカラジェンヌという少女マンガのようなプロフィールの持ち主だ。「本当は宝塚に入ってたくさんの人を幸せにしたかったけど、男の子で宝塚には入れなかったからジャニーズに入った」という彼は、母の影響もあって宝塚の大ファンである。ジャニーズがその始まりから宝塚の影響を多分に受けていることを考えると、SexyZoneこそジャニーの理想を反映させるのに最強の布陣であり、ジャニーズ帝国の存亡を託されて結成されたグループだと言えよう。メンバーの菊池風磨もインタビューで

SexyZoneってジャニーズの文化そのものなんだと思うんです*16

 

と述べている。

ここで先述した『二〇一五新春ジャニーズワールド』のトンチキな結末を再び思い出してみたいと思う。この舞台こそ、ジャニーが佐藤に天下をとるべく与えた城だ。暦をめぐる旅を終えてプロデューサーは「十三月は、みんなの心の中にあったのだ」と言った。通常の有限な時間の枠組みを超えた「十三月」を仮に「永遠」であるとする。また「ジャニワ」の空間にいた「みんな」とは出演していたSexyZoneらジャニーズニュータイプと観客のことであるなら、「みんなの心」とは「ジャニーズを愛する心」のことである。つまり、『ジャニーズワールド』とはジャニーズを愛する者たちの心の中に佐藤勝利が「永遠」を見出す物語なのである。佐藤は今年放送された密着ドキュメンタリーの中で「次のジャニーズワールドでは、世界観を完成させたい」という発言をしている。『ジャニーズワールド』の「完成」とは一体何を指すのだろうか。

 

 

 

ジャニー喜多川なき世界に向かって

佐藤:夢はでっかく、東京オリンピックオープニングアクトをやりたいです。一部でもいいから演出に加わりたい!ジャニーさんに、その姿を見せてあげたいです。

中島:確かに。改装が終わって新しくなった新国立劇場に最初にジャ二ーさんを連れていくっていうのはいい夢ですよね*17

 

今現在ジャニーが描く最も壮大な夢は、二〇二〇東京オリンピックオープニングアクトだ。ジャニーの夢がいつの間にか佐藤・中島らSexyZoneの夢にもなっている。オリンピックの運営側にどこまで届いているのかは分からないが、SexyZoneのバレーボールワールドカップのミュージックアンバサダー就任、オリンピックを意識した楽曲の製作、またより大規模なショーのためのSexyFamily結成など、ジャニーは本気でオリンピックを狙っているように見える。

だが、実はジャニーにとってオリンピックは通過点に過ぎないのではないか。ジャニーズ黄金期に二十代前後であったジャニーズグループの活躍がジャニーズニュータイプSexyZoneを生み出したように、オリンピックでSexyZoneが活躍することで新たにジャニーズを目指す少年を獲得することこそ、ジャニーの真の狙いなのではないか。SMAPや嵐は少年が憧れて自分の姿を重ねるには大きな存在すぎる。SexyZoneメンバーがジャニーに教育される前から、ジャニーズに憧れることでジャニーズとしての精神・振る舞いをある程度内面化していたように、オリンピックで生まれたジャニーズ少年もまた、ジャニーズの振る舞い・精神を内面化しているだろう。

そうなれば、たとえジャニーがいなくなっても、ジャニーズ自身が永遠にジャニーズを生み出し続けることができることになる。SexyZoneが、そして次に選ばれし少年たちがよりしろとなって、順番にジャニーの魂を地上にとどめ続けるのだ。このような永遠の「継承」を作り出すことこそ、『ジャニーズワールド』の完成なのではないだろうか。SexyZoneのデビュー曲『SexyZone』にはカップリング曲として前項で引用した『With you』ともう一曲『I see the light~僕たちのステージ~』が収録されている。平均年齢十四・四歳でデビューした美しく才能あふれる少年たちにジャニーはこのような一節を歌わせた。

    

僕たちのこれからを きみに捧げたい 永久(とわ)に…

『I see the light~僕たちのステージ』

 

  

果たしてオリンピックは、ジャニーズの手に落ちるのか。SexyZoneは先輩グループのようにジャニーズに憧れる少年を生み出し、ジャニーズの存在を永遠に近づけることができるのか。みんなが観るドラマもみんなが聴く音楽もない今、オリンピックはジャニーにとって、ジャニーズ少年を生み出す最後の砦だ。しかし、その使命は最年少グループが背負うにはあまりに重いものに感じられる。「Show must go on!」は少年たちにとって輝かしい未来への道しるべの言葉なのか、呪いの言葉なのか、今はまだ分からない。SexyZoneがグループとして過酷な試練を与えられる度に、私はジャニーにこう叫ぶ。

 

「プロデューサー、あんたは狂ってる!」

 ジャニーの返事はきっとこうだ。

「YOUたち、ジャニーズ マスト ゴー オンだよ」

  

 

 

*******************************

 

 

以上が、『F』に掲載した全文です。最後まで読んでくださった方、ほとんどいないかと思いますが、ありがとうございました。二年前のわたしのくすぶった思いが成仏した気がします。

これを書いた二年前から、ウェルセクコン、STAGEコンを経て、正直いまはSexyZoneの未来が明るいとしか思えないので、本当に五人に感謝ですね。

過去のことをいまさら…と思う方もいらっしゃるかと思いますが、完全に未来が明るい今だからこそ、ブログに載せようと思えたので、そこは今もう本当にSexyZoneを信じています。やったー!!SexyZoneかっこいい!大好き!!!

 

 

この文章を載せてもらった批評同人誌『F』の主催者の一人は、ジャニーズについても著書がある矢野利裕さんなのですが、矢野さん先月お会いしたときも、「最近久しぶりに『Ladyダイヤモンド』聴いたら、良すぎてイントロだけで泣けてきたよ~~~」とか言ってたので大変信頼できる男です!笑

興味を持たれた方のために、ご著書のリンクを貼っておきます。

批評同人誌『F』もどの号もとてもおもしろいので、ぜひ手に取っていただければと思います!文学フリマというイベントで買えます。10周年だそうです!すごいね!!

 

ではでは健人くんのソロコン感想に戻りますーー!

ジャニーズと日本 (講談社現代新書)

ジャニーズと日本 (講談社現代新書)

 
ジャニ研!: ジャニーズ文化論

ジャニ研!: ジャニーズ文化論

 

 

*1:SexyZoneとは二〇一一年に平均年齢十四・四歳とジャニーズ最年少でデビューした五人組アイドルグループである。「マイケルジャクソンのセクシーさを目指す」という謎のコンセプトと、「顔面偏差値東大級」という触れ込みが話題になった。メンバーは中島健人(二十一歳)、菊池風磨(二十歳)、佐藤勝利(十八歳)、松島聡(十七歳)、マリウス葉(十五歳)である。Sexy鬱とは、ここ最近の年長組三人と年少組二人の格差売りのあまりの激しさに、箱推しのファンが「なぜアイドルを見て悲しい気持ちにならなければいけないのか」と頭を抱える現象を自虐的に表現した言葉。中島健人が「Sexyわっしょい」「Sexy人間」「Sexyサンキュー」など、やたらとSexyという言葉を使うことからうまれた言葉でもある。五人でのレギュラー番組の突然の打ち切りや、年長三人のみのCD発売、コンサートや歌番組での衣装格差、年少二人がデビュー前のジャニーズJrと別ユニットを組むなど、これまでのジャニーズではあまり見られない状況だけに、SexyZoneファンのみならず多くのジャニオタの注目を集めている。逆に言えば、これまでジャニーズのグループは、一度デビューしてしまえば、自ら希望するか、違法行為でもおかさない限り、グループを脱退させられたり、解散させられることはなかった。

*2:大谷能生速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!ジャニーズ文化論』(二〇一二年十二月 原書房)に詳しい。

*3:勝利」一番の見せ場である命綱無しの赤布フライング、「健人」一番の見せ場である三重人格のシーンも、それぞれ「生きること」と「ショーを作ること」の関係性を描いたものであるが、長くなってしまうため、暦ショーの意味付けとともに、改めて別の機会に論じることにしたい。

*4:実際、「Show must go on!」精神はファンの間でも共有されている。昨年末『紅白歌合戦』でSexyZoneはジャニーズJrたちとスネアドラムをたたくパフォーマンスを披露したが、楽器の配置ミスにより、佐藤勝利の前にスネアが用意されないという事件が起こった。その際、佐藤は大きく手を広げてリズムをとることで、まるで最初からそのような振り付けだったかのように見せ、ミスをフォローし、パフォーマンスを中断させなかった。SNS上では「まさにShow must go on!精神である」と機転を利かせた佐藤や動揺せずパフォーマンスを続けた他のメンバー、Jrを賞賛する声が上がっていた。

*5:「EndlessSHOCK 2015千穐楽」『明後日までは、とても待てない』(二〇一五年三月三十一日の記事より)http://moz.hatenablog.com/ 

*6:BSで放送されているジャニーズしか出演しない歌番組。番組名のため、家族にジャニオタであることを隠している場合には録画がためらわれる。

*7:bayfm「LOOK AT YOU-MA」(二〇一五年四月九日放送)

*8:WiNK-UP四月号』(二〇一五年三月 ワニブックス

*9:加藤シゲアキ『ピンクとグレー』(一〇一二年一月 角川書店)「ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの二人の青年の愛と孤独を描くせつない青春小説。NEWS・加藤シゲアキ渾身のデビュー作。」

*10:矢野利裕「加藤シゲアキ『ピンクとグレー』が描くアイドルの本質とは?村上春樹作品との比較から考える」『リアルサウンド』(二〇一五年二月十二日の記事)

http://realsound.jp/2015/02/post-2468.html

*11:『Myojo三月号』(二〇一一年二月 集英社

*12:『SexyZone写真集 Sweetz』(二〇一二年八月 集英社

*13:『Myojo十月号』(二〇一二年九月 集英社

*14:『ポポロ五月号』(二〇一三年四月 麻布台出版)

*15:『ポポロ十月号』(二〇一三年九月 麻布台出版)

*16:日経エンタテインメント四月号 二〇二〇の未来予想図』(二〇一五年三月 日経BP社)

*17:前注と同。

実写版『心が叫びたがってるんだ。』感想

 

kokosake-movie.jp

 

実写版『心が叫びたがってるんだ。』今日7/22(土)の公開に先立って試写会で観させていただいたので、感想を書くよ。

原作のアニメ版にかなり忠実につくられた作品だと思うので、まあネタバレも何もないかもしれないですが、気にする方は注意してお読みください。もしくは観てからお読みくださったらうれしいな。予告編はこちら。

www.youtube.com

 

高校三年生の坂上拓実(中島健人)は、突然「地域ふれあい交流会(略してふれ交)」の実行委員に任命されてしまう。一緒に任命されたのは、誰ともしゃべらない成瀬順(芳根京子)、拓実の元恋人で優等生の仁藤菜月(石井杏奈)、ケガで夢破れた野球部の元エース田崎大樹(寛一郎)だった…というところからはじまるお話。

 

 

順がなぜしゃべらないかというと、幼い頃に両親が離婚したのは、自分のおしゃべりのせいだと思っているからだ。しゃべろうとするとおなかが痛くなる。それは過去に大切な人を傷つけてしまった自分への「呪い」なんだと思っている。

映画の前半、始まってたぶん30分くらい経った頃は、そうか、これは順が王子様に出会って呪いを解いてもらう物語なんだって思ってた。

 

順が「ふれ交」の実行委員無理ですって伝えるために担任のしまっちょ(荒川良々)を探して音楽室を訪れるシーンが好きだ。

音楽室の中からかすかに聞こえる歌声。

おそるおそるのぞき込む順。

放課後のうすぼんやりした光の中で、『Around the World』のメロディにのせて「たまごに捧げよう BeautifulWord 言葉を捧げよう」とまるで順の頭の中の物語をなぞったような歌をアコーディオンで弾き語る拓実。

 

伏し目がちにアコーディオンを弾く端正な横顔に目を奪われてしまう。さっきまで、あんなにぼけーっと自転車こいでたのに。猫背でぼんやり歩いてたのに。わたしの心まで、順のときめきに共鳴してしまう。

 

中島健人くんは、普通の高校生坂上拓実の役作りとして「素敵に見えないように」「かっこよく見えないように」努力したと雑誌で話していたけれど、このシーンの説得力は中島健人の佇まいあってのものじゃないかと思う。おかげで順が「この人は私をわかってくれるたった一人の運命の王子様だ」と信じ込む瞬間が陳腐に思えず、観客は順の気持ちに寄り添える。

この作品はこういう、人の心が動いて少しずつ前に進む瞬間の積み重ねを丁寧に描いている。

 

 

 

 

結局「ふれ交」では、しまっちょに委員を任命された四人が中心になって順の考えた物語をミュージカルにすることになるのだけど、前半の「順が王子様に出会って救われる物語」が、途中からじわじわ反転していくのがすごくいい。

順の不気味なほどの世界に対するピュアさ、ピュアゆえの滑稽さ、滑稽さゆえの愛らしさには、周りを動かしていく力がある。芳根京子さんの演技がまた本当に人の心をつかむ。拓実や菜月や田崎やクラスメイトたちと一緒に、いつのまにか順を応援している。一緒に一歩踏み出したくなる。

 

担任から「お前、いつもそうやって自分の気持ち押し殺してるよな」って言われてしまう拓実は、予防線はって「別に俺なんて」って踏み出すことをためらいがちなタイプなんだと思うけれど、そういう拓実に順は「すごいすごい」「坂上君天才!」ってめちゃめちゃほめて、なんかやれるかもって思わせてくれる。順がおなか痛くなりながらそれでも伝えなきゃって必死な姿に、拓実は一歩踏み出す力をもらう。順を助けようとすることでむしろ拓実が救われていく。

 

拓実だけじゃない。菜月も田崎も、みんな順に動かされて一歩踏み出す勇気をもらっていく。

「ふれ交」当日、トラブルがあって急遽順の役を代役の子が演じることになるのだけれど、そのときにクラスメイトの衣装メイク係?の女子が言った言葉が印象的だった。

(本物でも代役でも)別にどっちでもいいよ。どっちでもわたしがやる仕事は変わんないんだし。

そして、こう続く。

どっちにしても絶対成功させないと。失敗したら一番しんどいの成瀬でしょ。

中心だったはずの順が不在にも関わらず誰も投げ出さないでミュージカルが滞りなく進んでいくことが、かえって順がクラスに与えた影響の大きさの証明になっていく。

 この「本物」か「偽物(代役)」かなんてどっちでもいい、という感覚は、この作品の中で一貫して響いているテーマでもあるかもしれない。玉子だって、「、」が余分な王子様の偽物だし。

 

順の書いた詞に合わせて『悲愴』と『Over the Rainbow』が混ざりあうように歌われるラストのミュージカルシーンは、二曲をマッシュアップしているので、順が想いを込めた歌詞はあまり聴き取れない。聴き取れないからこそ、「本当に伝えたいこと」の中身なんて、その瞬間ごとに変わるかもしれなくて、一つじゃなくたって、本物じゃなくたって、偽物だって、なんだっていいのかもしれないと素直に思わされる。

 

あの順の見た夢の中みたいなミュージカルで、順と拓実がお姫様と王子様になったのは一瞬だけだったけど、たしかに手をつなぎ、声が響き合い、それがクラスメイトに広がって、また新しい響きを生んでいった。「本当に伝えたいこと」の中身なんてきっとすぐ忘れちゃうけれど、彼らは、あの響きあった音色は、何かを伝えたいって歌った感触のことはずっと覚えているんだろうなって思う。

 

 一生忘れられない傷ついた言葉とか、うまくいかない親子関係とか、どんなに好きでも振り向いてもらいえない恋とか、「ふれ交」の後も『ここさけ』の世界は、相変わらずどうにもならないことだらけだ。 

けれど、心のどこかにみんなあの響きあった音色と屋上から見た真っ青な秩父の空の色を覚えていて、その美しい色を宝石みたいに大切にすることで、これから真っ黒な土砂降りや灰色の曇り空の日でも、明日を信じたり、自分を信じたり、他人を信じたりして、一歩前にすすむことができるのかもしれないと思う。

 

彼らが心の中に大切にしまった宝石の美しい色を取り出して見せてもらったような、そんな映画だった。 

 

 

 

 

『ユーリ!!! on ICE』を見てロシアに行きたくなった人に、本気でロシア旅行をすすめたい

 

久保ミツロウ先生のファンなのがきっかけで見始めた『ユーリ!!!on ICE』、めちゃめちゃおもしろくて、毎週楽しく見ています。

yurionice.com

 

 

先週のロシア回がとくに楽しみでした。なぜなら、今年の春にたまたまロシア(モスクワとサンクトペテルブルク)を訪れて、ロシアが大好きになってしまったから!!!

 

わたしが行ったときは、『地球の歩き方』がちょうど出ていないタイミングで、ロシアのガイドブックで手に入るものが『るるぶ』一冊だったし、個人の旅ブログも他のヨーロッパに比べて少なくて、正直「寒い、ボルシチピロシキ、寒い……以上!」みたいなぼんやりしたイメージしかなかったんですけど、

 

でも行ってみたら、ロシアとても楽しかったーー!!!

一気に大好きな国になってしまいました。また行きたい。だって、街並みがきれいだし、ごはんおいしいし、思ってたよりずっと人が優しいし、お買い物も楽しいんですよーーー!!

現地のロシア人の方も、「日本の人にもっとロシアを知ってもらいたい!!ロシアに旅行に来てもらいたい!!」と言っていたので、今日は、ちょっと本気ででロシア旅行をおすすめしてみたいと思います。おすすめしたい理由を6つの項目に分けてみたけど、予想外に長くなってしまいました…。

 

 

 

 

1、街も建築も、とにかく美しい

サンクトペテルブルクもモスクワも基本的に街並がとても美しいです。

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『ユーリ』のロシア回に出てきたのは、赤の広場の「聖ワシーリー寺院」

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不思議な外観だけでもインパクト大なのだけど、中に入るとさらに美しい。

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わたしが行ったときは、ちょうど現地男性4人がボランティア?で歌うゴスペルが響き渡っていました。

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ロシアの建築物って、外観は美しいけど中に入って残念…ということがなかった気がします。天井が高くて、内装もすみずみまで手の行き届いた美しい建物ばかり。

 

 

 

ヴィクトルの故郷、サンクトペテルブルクだと「エルミタージュ美術館」が有名ですね。

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めちゃめちゃ広くて、歩いても歩いても、美しい部屋が続きます。

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「エカチェリーナ宮殿」も夢みたいにゴージャスな場所でした。

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観光地の建物ももちろんきれいなのだけど、普通の街並みも落ち着いていてよかったです。個人的にはモスクワよりサンクトペテルブルクの街並みが好きでした。

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『ユーリ』のエンディングのユリオの写真は、サンクトペテルブルクの「ロシア美術館」のライオン像ですね。わたしは時間がなくて見られなかったんですが、もし放送後なら絶対行きたかった」!ライオンの前でユリオごっこしたかった!

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artscape.jp

 

 

 

 

 

 

2、素敵なホテルに安く泊まれる

ここしばらくロシアルーブル安が続いているので、他のヨーロッパに行くことを考えると、かなりお安く素敵なホテルに泊まることができるというのが、実は一番のおすすめポイントかもしれません。『ユーリ』の第8話でヴィクトルや勇利が泊まっていたのは、こちらの「アエロスターホテル」がモデルですね。

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aerostar-hotel-moscow.moscow-hotels.org

 

 

私が泊まったのは少し古めホテルだったのですが、美術館のような内装で、ときめきはもう最高潮…という感じ。

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なんか、朝ごはん食べてると、いきなりハープの生演奏が始まるんすよ…

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 ロシアの建物は、天井が高くてシャンデリアがぶらさがっていて、家具もクラシカルで重厚なつくりのものばかりなので、貴族になった気分が味わえて最高でした。そんなにお金払ってないのに…!他の国でこの雰囲気をこの金額で味わうのは絶対無理だと思います!!!ホテルの中はしっかり暖房が効いていてぽかぽかです。

 

 

サンクトペテルブルクのホテルでも、モスクワ行きの夜行列車を待つ間、ホテルのカフェバーでお酒を飲んでたら、ピアノの生演奏が始まって、贅沢気分すぎました。

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3、乗り物がすてき 

 モスクワの地下鉄は、歩いてるだけでテンションがあがる美しさ。とくにソ連時代にできた駅はどれも贅を尽くした作りになっていて、まるで美術館を歩いているみたいです。

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モスクワとサンクトペテルブルク間の夜行列車も、クラシカルで、すてきでした。

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4、ごはんがおいしい!「フクースナ!」

第6話でヴィクトルが言っていた「フクースナ!」はロシア語で「おいしい!」という意味。

わたしは特別グルメではないので、あれなのだけど、ロシア滞在中、わりと何食べても「フクースナ!」って言ってた気がします。

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 まずは、ボルシチ。どのレストランにもあるので、いくつか食べ比べたのだけど、お店によって味がけっこう違います。これはポットパイのボルシチ。バターたっぷりのサクサクのパイをくずして、スープと一緒に食べる。おいしい。どの店でも、ボルシチにはサワークリームが別添えでついてきました。

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あと美味しかったのは、ホテルの朝食で食べた「ブリヌイ」というクレープみたいな料理。日本のクレープよりモチモチ感が強いです。ロシアは日本よりジャムの種類が充実しているので、焼きたてのブリヌイをいろんなジャムで食べ幸せでした。 ブリヌイは、サーモンとイクラとチーズを包んでごはんにもなる。こっちもおいしい。

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ちなみに ホテルの朝食、いくら食べ放題ーーー!!ひゃっほーーーー!!

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ファミレスみたいなお店でもごはん食べたました。ナスとトマトのチーズ焼き、ボルシチ、ジャガイモのパンケーキ?みたいなメニュー。これにビールも何杯か頼んで、たしか3000円くらいだったと思います。

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そして、なによりおすすめしたいのが、ファーストフード!!!!!!

特にジャガイモのファーストフード「クローシュカ・カルトーシュカ」というお店が超おすすめ。

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ふかしたジャガイモにバターとチーズをたっぷりのせて食べるファーストフード。

20種類くらいからトッピング3種類選ぶのですが、そのシステムが全然わかってなくて、店員のお兄さんが英語で一生懸命説明してくれました。お兄さん超優しい。でも、全然言ってることが分からなくて、最終的に「おまかせで!」って言って注文しました。

 

 

 

で、出てきたのがこれ!

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これが、めちゃめちゃおいしい!!!!

お兄さんが選んでくれたトッピングは、サワークリームとハムサラダとラタトゥイユ。熱々なので、サワークリームがちょっと溶けて、とにかくフクースナ!

日本とジャガイモの種類ちがうのかな。手のひらサイズの大きさで、ほっくほっくで甘くて、感動しました。飲み物セットでコーラをつけても、500円でおつりがくるし、おなかいっぱいになるし、すばらしい。

 

ヨーロッパのファーストフードって、安かろう、マズかろう、店員の態度も悪かろう…というイメージだったのだけれど、ここの店員さんはとても優しくて、一気にロシア好きになってしまいました。客層も、老若男女、おひとり様からファミリーまでいて、雰囲気が日本とちょっと似てて、落ち着いてごはんできたよ。

 

思い出してみればロシアのごはんは、たいてい店員さんがいい人で優しくて、いっぱい英語で話しかけてくれた。全然おそロシアじゃなかった!

 

ほかにも「テレモーク」というブリヌイのファーストフードも人気みたいです。ロシアはお財布にも優しい国だ!

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5、お酒もおいしい!

ビールが水みたいに安いので、毎食飲んでました。夜行列車でも。これは「バルチカ」という名前のロシアビール。♯0~9までナンバーによって、ノンアルコールからストロングまでアルコール度数が違うのだけど、#3はたしかスタンダードな5%のやつです。

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ワインもおいしい!ロシア料理といえばグルジアワインが有名です。

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ロシアは、お酒に合う食べ物だらけでお酒好きには天国。酸味のある黒いパンにバターをたっぷり塗ってイクラをのせたら、すぐにワインが空になってびっくりした。

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ボルシチに使うビーツのサラダ。ビーツはちょっと甘いので、添えてあるチーズのしょっぱさと合う。お酒ともめっちゃあう。

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あとロシアのお酒と言えば、ウォッカ。アルコール度数が高いので凍ることはないのだけれど、冷凍庫にいれておいて、トロトロにして飲むのがおいしい飲み方らしいです。

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6、買い物が楽しい!

現地のロシア人の方とお話ししたときに「ロシア人はね、買い物が大好きなんです。だからすぐショッピングモールを建てるし、平日昼間でもたくさん人がぶらぶらしてるでしょ?ロシア人って、貯金できないんですよー」ということを言っていました。意外だったけれど、たしかにロシアのお買い物、基本テーマパーク感があって楽しい!

 

  

モスクワのグム百貨店。赤の広場にあります。f:id:chocomintholic5:20161128012152j:plain

 

 

このイラストでお散歩している勇利とヴィクトルの背景がグム百貨店。夜はライトアップされます。なんていうか、夢の国です。『チャーリーとチョコレート工場』とか好きなら、絶対好きだと思います。

 

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三月に行ったからか、日本の桜をイメージした展示がありました。

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このデパートのパン屋さんのピロシキがとってもおいしいよーって聞いたんだけど、食べそびれたからロシアまた行きたい。なんのピロシキ…。

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グム百貨店は、とにかく食料品コーナーがすごい。

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歩いてるだけでわくわくする。楽しかったです。

 

 

 

 

 

サンクトペテルブルクの超巨大デパート「ガレリア」もおもしろかったです。 

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なんでもある。ユニクロも日本食レストランもある。スターバックスも入ってるから、ヴィクトルと勇利がもってる「マトリョーシカタンブラー」も買えるよ!ただし、モスクワ店のものと微妙にデザインが違うらしいです。

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www.myzakuro.com

 

 

 

あとは、やたらと女性のルームウェアの店がいっぱいあった気がします。

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かわいくないですか?

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かわいいですね。

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ちょうどセールの時期だったので買い込みました!!

 

 

おもちゃ屋さんもあるので、ロシア語でしゃべるこいつも買えました。

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ロシアの楽しい思い出に浸っていたら、予想外に長くなってしまいました。最後まで読んでいただいてスパスィーバ!ロシアに行きたくなったという人が増えたらいいな!ロシア旅行ほんとにおすすめですよ!

 

 

 

以下、一応わたしが行く前に気になってたことをまとめておきます。

  • モスクワ、サンクトペテルブルク市内なら、それなりに英語が通じます。他の非英語圏のヨーロッパと変わらないと思います。
  • 看板や観光地の案内板、公共交通機関、スーパーマーケットの商品の表記などは、基本的に英語表記はほとんどないです。キリル文字が読めないと、本当に文字情報が入って来ない世界です。ホテルや「English menu」って看板が出てるレストランは、英語表記があります。わたしは同行者がある程度ロシア語ができたので全然勉強しないまま行ったら、文字情報が入って来なさすぎて、パラレルワールドに迷い込んだ感がすごかったです。アルファベットに似てるのに、読み方は全然違うから、毎日なんだか変な感じなんですよ。あまりに文字情報に飢えてしまい、ホテルでは日本から持参した本ばかり読んでいました。公共交通機関で移動することを考えると多少キリル文字を勉強していった方がよいかと思います。
  • カード使うのは心配な面もありますが、カードが使える店が多いです。街中の銀行にレートの看板が出ていて、日本円とルーブルが両替できます。ATMでもルーブルがひきだせます。大きなお店やホテルならドルやユーロも使えるようでした。観光地の有料トイレやおみやげの屋台は、ロシアルーブルの現金が必要でした。
  • 治安も、観光地として人気のヨーロッパの他の国と変わらない印象でした。現地の方とお話して気をつけてと言われたのは、スリくらいでした。
  • スターリン廟」だけ「No photo!!」って言われましたが、それ以外は写真撮ってOKでしたし、特別におそロシアなことなかったです。
  • わたしが行ったのは三月でしたが、日本の一月、二月の格好で大丈夫でした。お天気によりますが。晴れればコートが暑い日もあったし、みぞれの日は寒さで顔が痛かったです。でも現地にユニクロファストファッションのショップもあってすぐに防寒具を買い足せるので、そんなにビビらなくても大丈夫かと思います。
  • ビザが必要なので、計画があるなら早めにとりましょう。早めの方がビザも安いです。

 

まだまだ書きたいことはあるので、また書くかもですー。ダスビダーニャ!!

 

次のショーの幕が上がるその時まで、おやすみなさい―中島健人ソロコン『#Honey♡Butterfly』に行きました

8/5に中島健人くんのソロコンサート『#HoneyButterfly』に行ってきました。前半ラストの回だったのですが、私個人としては初日。いやー、超よかった!ずっと楽しくてときめいて、健人くんが蝶々っていう設定はよいなーってあらためて感動して、2時間ずっと感情が忙しかった。アイドルの中島健人くんはやっぱり自分にとって特別に好きな人だ。

 

とにかく書きたいことがたくさんあるし、何とかして言葉に残そうと思うんだけど、健人くんを見て好きだなーって思うのは、脳みその一番奥の部分という気がするから、いつも言葉にするのが難しい。セトリに沿って一曲一曲丁寧にレポするのにずっと憧れていたので、今回ついにやってやるぜ!と思って腕まくりしてパソコンを開いて気づいたのだけど、最初の数曲がちゃんと思い出せない。OPで健人くん本人がメインステージのせり上がりからドドン!って出てきた姿を見て「うわ健人くんまぶしいかわいいすききれいかっこいいすき…」って思って、そこから数曲分の記憶があんまりない。セトリ順は無理です。だから、まずはぼんやり全体について思ったことを書いていこうと思うよー。ということで、基本的に細かいセトリのネタバレは無しです。オープニングの映像の話はするよー。ぶわーっと最後まで書いたけど、結局ぐちゃぐちゃだ。もうさすがに眠いから、ここまでで明日以降に推敲します。前置きが長くなってしまったー。

 

 

 モルフォ蝶とハ二ー

『#Honey♡Butterfly』のコンセプトは、健人くんが蝶々になって、ファンであるハニーという蜜を吸いにゆく…というもの。蝶々って言ってもただの蝶々じゃなくて世界一美しいとされる「モルフォ蝶」。

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現在のメンバーカラーがモルフォ蝶と同じ青色っていうのもあるんだろうけど、世界一美しい蝶を自ら名乗るのが中島健人くんらしくて、その時点でニコニコしてしまう。今回のソロコンは、メンバーごとにグッズをプロデュースして出しているのだけど、健人くんのグッズは「モルフォ.K」。

発表されたときにファンの間でも激震が走った「モルフォ.K」というネーミング。実は、蝶々のイヤーカフです。私も買った!つけると、ほんとに青色と金色の蝶々が耳にとまっているみたいで、かわいい。なんとか普段使いできるかもってラインのグッズ、すばらしいです。

このグッズにも貫かれている「健人くんが蝶々になってハニーたちの蜜を吸いにいく」ってコンセプト。ステージを観るまでは可愛らしいコンセプトだなあくらいに思ってだのだけど、実際に観て『胡蝶の夢』だなって思って、そうだとすると、めちゃくちゃアイドル中島健人だ…ってものすごっく感動したので、以下それについて書いてみる。

 

 

 『胡蝶の夢』のはなし

胡蝶の夢』は、私はたぶん高校の倫理?の時間かなんかに習った記憶がある荘子の文章。胡蝶っていうのは蝶々のこと。

胡蝶の夢 - Wikipedia

 

中国、戦国時代、思想家である荘周が胡蝶になった夢をみた。
自分が夢の中で蝶になったのか、それとも夢の中で蝶が自分になったのか、自分と蝶との見定めがつかなくなった*1

 

 

荘周さんという人がある日、うたた寝をしていたら、夢の中で蝶々になっていた。自分が人間であることも忘れるくらい夢中でひらひら舞うことを楽しんでいたのに、ふと目が覚めるとやっぱり人間のままだった。けれど、本当に人間の荘周が現実なのだろうか。人間の荘周こそ、蝶々の荘周が見た夢かもしれない。人間の荘周が現実で、蝶々の荘周が夢だなんて誰が決められるだろうか。

 

というようなお話。この『胡蝶の夢』は学校で習って覚えてるっていうよりは、本当によくアニメとか映画のモチーフになっているので後から何かで読んで知った気もする。こちらのブログがめちゃめちゃ詳しいです。

『マトリックス』と胡蝶の夢。 | 人生朝露 - 楽天ブログ

 

『#Honey♡Butterfly』の話をする前に、『胡蝶の夢』が下敷きになっているとされる有名なセリフをいくつか引用してみる。

 

疑似体験も夢も、存在する情報は全て現実であり...そして幻なんだ。どっちにせよ、一人の人間が一生のうちに触れる情報なんて、わずかなモンさ。『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

起きてるのかまだ夢をみてるのかはっきりしない感覚って味わったことないか?(You ever have that feeling where you are not sure if you're awake or still dreaming?)『マトリックス』 

今は世界が逆転したみたいだ。あっちが現実でここが夢に思える(Everything is backwards now, like out there is the true world, and in here is the dream.)『アバター

例えば、『アバター』では主人公が車いすで生きる現実の人生と、アバターとして自由に飛び回る仮想現実の世界、自分のとってどっちがホンモノ?みたいな話の中で、このセリフがでてくる。

 

 

 

 

中島健人と『胡蝶の夢

小学生のころ、『遊戯王』を読んで海馬というキャラクターに憧れてロングコートを裾を翻しながら登校してたというエピソードが大好きなのだけど、健人くんは昔からお話の中のキャラクターになりきる遊びをよくするっぽい。そして、素の自分も、キャラクターになりきっている自分も、同じように大切にしている感じがする。健人くんにとって「アイドル」も同じようなものなのかなと思う。

 

"嘘は罪でもあり、時に奇跡を起こす"。アイドルもそういうものかもって。俺なんて一年中エイプリルフールかも(笑)。しかし俺の場合、むしろ素の俺が嘘で、みんなに見せてる姿が本当の自分かもなー。それくらい、"アイドルでいよう!"とする自分に、生粋さを感じてる

*2

 このインタビューで健人くんは、「アイドル」やっている自分を「嘘」だって言っているんだけど、同時に「素の俺が嘘で、みんなに見せてる姿が本当の自分かも」って言っている。しかも、ファンへのリップサービスじゃなくて、本気でこう思っているのかなと感じさせてくれることが多い。もしかするとご両親の考え方も大きいのかもしれない。以前、ラジオでこんなことを言っていた。

両親はちょっとロマンチストなのかな…?テレビ観てても「あーーLOVEじゃないね」とか言う。「トキメキが足りない」とか。で、「おまえさぁ、実体験がすべて顔に出るとかって言うけど、想像の域でも出る部分は出るんだよ。想像力を大切にしろ!」って怒られるんですよ、常に。

*3 

 

こういう考え方の人だから、もともと『胡蝶の夢』との親和性はとても高い。

 

健人くんと言えば、デビュー直後のファーストコンサートで少年隊の『星屑のスパンコール』を歌う前に

「ファンのみなさんは、僕たちにとって恋人です」

と言ったエピソードが有名だ。

「実は僕、ラブホリックなんですよ(笑)ラブストーリーが大好きで、もう夢中ですね。現実の僕の恋人はファンの皆さんですから、特定の子との恋はラブストーリーを通して疑似体験しているのかもしれない」  *4

この発言がひとり歩きしてしまって、「ラブホリ先輩」とか「ラブホリ王子」って呼ばれてバラエティ番組で「甘い言葉」を求められることも多い。デビュー当時のこういうふるまいは、本当に多くの人を幸せにしてきたのだと思うけど、健人くん自身は大人になるにつれて、この発言に苦しめられることもあったのではないかと思う。今年の何かのインタビューで、

ジャニーズに入った中学生のころ、アイドルとしてトップになるためには寄り道なんてしていられないと思って、プライベートで女の子とかかわるのをやめた

 という話をしていた。*5中島健人くんは私が知っている限り、ゴシップ記事が出たことがない。週刊誌の追いかけられても、テレビ収録でお茶碗にごはんつぶが残っていたぞ!みたいな記事ばかりだ。普通にモテるだろうし、デートだってなんだってしたいだろうに、健人くんは、アイドルという職業に対してストイックにいろんなことを我慢をして、自分の理想の「アイドル像」を守ってくれているのかなと思う。そういうところが本当にすごいと思うし、一方で心苦しいというか、アイドルの人生に健人くんを縛りつけているようで切ない気持ちになることもある。健人くんのゴシップ記事がでることよりも、それによって「ファンのみなさんは、僕たちにとって恋人です」が嘘になって、ファンが傷ついたり、ファンが傷つくことに、健人くんが傷つくのが嫌だなって思っていた。でも、もしも健人くんが『胡蝶の夢』のように、ステージ上の自分もプライベートの自分も等しく大切なものだと思っているならば、「ファンのみなさんは、僕たちにとって恋人です」という言葉は一生嘘にならない気がする。それって、ものすごい発明なのではないか、世界中の人をハッピーにする魔法なのではないか、って思ってコンサート中ずっと感動していた。

 

 

 

 

 『胡蝶の夢』と『#Honey♡Butterfly』

うまく伝えられている自信がないのだけど、最後に、実際にコンサートのどういうところに『胡蝶の夢』を感じたかを書いてみる。ここから少しだけネタバレ。

開演直後に私が記憶をなくしたのは、OPの映像がめちゃめちゃ良かったからだった。曲は新曲の『Hey Summer Honey』で、映像の内容はこんな感じ。

 

TDCホールの客席、アリーナ中央あたりにTシャツとGパンの普段着っぽい健人くんが一人で座って手鏡を見ている。カメラに気づいて、立ち上がって、こっちにおいでって誘導してくれる健人くん。客席の後ろを通って舞台裏に案内される。楽屋では今回バックについてくれるJrのみんながステージ衣装で健人くんを待ち構えていて、モルフォ蝶をイメージしたひらひらブルーのジャケットを着せてくれる。ステージ衣装をまとった健人くんが映像の中で一曲目のスタンバイをする


もう、本当によい。映像の中でスタンバイした健人くんが、そのままバアーーーンって実際のステージに出てくる。Jrのみんなとのやりとりが楽しそうなこと、ワンカメショー的な演出、新曲がかっこいいのがよい。さらに個人的には、ステージ裏からはじまること、ステージの下と上をひと続きに見せてくれたこと、小道具として鏡を持ってたことに、『胡蝶の夢』を感じてぶわって鳥肌がたった。

 

「鏡」って映画とかでよく、パラレルワールドや異世界に行くための入り口みたいな役割を持つ。鏡を見ているうちにモルフォ蝶になって気づいたらステージの上って、よく出来すぎてないですか???ひとりの男の子としてステージの下からアイドルに憧れていた普通の男の子だった中島健人くんが、*6鏡を見ているうちに、気づいたらステージの上に立って蝶々のアイドル中島健人くんになってたという感じがこのOP映像に表れていて本当に最高すぎる。 

他にも、中盤で健人くんがうたた寝をしているうちに、気づいたら衣装を着替えていて、それまでの曲と別のストーリーの中を生きる感じの演出があるのも『胡蝶の夢』っぽくて好き。

終盤で「Butterfly」にちなんだ歌をやるとき、健人くんがセットごと蝶々になった後(伝われ!)、そのセットから抜け出して死ぬほどかっこよく歌い踊る演出がある。この時の衣装が右肩に小さく蝶々の刺繍がしてあるのがとてもよい。蝶々が男の子の姿になったり、蝶々に戻ったりする感じで漫画みたいに素敵。言葉が足りない。

 

 
みんなで素敵な奇跡を起こしましょう!

健人くんが今回のコンサートのラストで言ってた言葉。ちょっとどうかと思うけど、健人君は本気で本気でファン全員と直接会って元気をあげたいって思っている節がある。そんなの実際には無理だ。けれど、どうにかこうにかコンサートを通じて健人くんは本当に会うのと同じか、それ以上のことを起こそうとしているのかなと思う。

アイドルはやっぱりフィクションだから、私は健人くんのことを本当は何も知らない。毎日顔を見るし、誕生日も血液型も肩幅も苦手な食べ物も知っているけど、それ以外は知らない。アイドルがフィクションな存在であることに傷つく日もあるのだけれど、フィクションだからこそ救われる日もある。わたしは救われることが圧倒的に多い。

そういう感覚を、アイドルとかステージ上でキラキラ輝く人たちのことをまるで身近な恋人や家族や友人のように大切に思って、頑張っている姿に救われてしまう気持ちを中島健人くんは、本当に本当に分かっていて、ファンの人に何とかその気持ちに応えたいたいと思っているんじゃないかと思う。

その健人くんなりのこたえが『#Honey♡Butterfly』には詰まっている。と思う。

ご両親の教育や健人くん自身のもともとの資質もあるんだろう。けれど、「ラブホリ」という言葉が広まって『JMK』やったり甘い言葉を求められたりして健人くんが歩んできた道で見つけたこたえなのかな、と思うとすごいって泣きそうになる。普通「ファンのみなさんは、僕たちにとって恋人です」のこたえなんて、見つからないよ。

 

以前、2015年の新春ジャニワについて、こんな記事を書いた。

chocomintholic5.hatenablog.com

この記事で健人くんについて「フィクションを重ねた先にこそ健人くんリアルがある気がする」ということを言っているのだけど、この2015年のジャニワのラストで健人くんは

「次のショーの幕が上がるその時まで、おやすみなさい」 

というセリフを毎回言う。ここがすごく好きだったのだけど、『胡蝶の夢』を補助線にすると、このセリフも『#Honey♡Butterfly』とつながっている気がしてくる。

 

中島健人くんのことを考えると、自分の人生をかけてアイドルを貫こうとする姿勢が、とても愛しくて、とてもとても尊くて、そしてちょっと切ない気持ちになる。『#Honey♡Butterfly』ほんとうに素敵なコンサートだった。私は明日(もう今日だね)で最後だ。

 

 

*1:http://kotowaza-allguide.com/ko/kotyounoyume.html

*2:『テレビジョン』2015年4月

おしごとけんと (@oshigoto_kento) | Twitter さんから引用させていただきました。

*3:2015年7月『よんぱち』

恋する健人 (@koisurukento) | Twitter

さんから引用させていただきました

*4:『QLAP』2011年12月

*5:何で話していたか思い出せないので、わかる方教えてほしい

*6:中島健人くんは、ジャニーズが大好き。めちゃめちゃ強火の山田涼介担。

恋を勉強中の君へ―『時をかける少女』第2話のはなし

時をかける少女』第2話をやっと見た。

あいかわらず、未羽、吾朗、翔平の青春きらきらっぷりがまぶしい。恋愛を参考書で勉強する未来人かわいい。第2話は未羽たちの担任、数学の矢野先生がメインの回で、先生役が加藤シゲアキさんなのが、とてもよかった。

 

未羽は進路面談中に、矢野先生にこんなことを尋ねる。

「あの、生徒に恋したことありますか?」

「何だよ急に、ないよ、あったら問題だろ」

「だけど、生徒に恋されたことはありますよね?」

「なんで?」

「先生はその子のことどう思ってたんですか?」

「ないよ、恋されたことなんて」

「前の学校で、ほんとにありませんか?」

「勘違いしそうになったことはある、かも」

「勘違いじゃないです」

「結局わからなかったし、もうわからないんだ。余計な事言いふらすなよ」

 

タイムリープによって、かつて矢野先生のことが好きだった女の子の存在を知ったからだ。

今回タイムリープするきっかけになったのは、クラスメイトの西岡君。未羽たちは、西岡君が二年前に心臓の移植手術をうけたこと、それ以来なぜか高いところが好きになってしまったこと、そしてなぜか毎日決まって20時20分になると胸がドキドキすることを打ち明けられる。おそらく、心臓を提供してくれたドナーの影響なのだろうと。

 

過去の世界で出会った西岡君のドナーこそ、矢野先生のことを好きだった女の子だった。ギリギリまで図書館で勉強をし、矢野先生が20時20分の電車の乗る姿を見届けてから帰る。それが彼女の習慣だった。先生と生徒という関係性だから、声もかけず、見ているしかなかった女の子。秘めた恋心を一度も打ち明けられず我慢したまま、二年前に自転車事故で亡くなってしまった女の子。

 

想いを伝えないまま死ぬなんて悲劇だ。超悲劇。あの子の恋心がないものにされてる、確かにあったのに。

 

別にモノを撮らなくてもいいんじゃない。時間を撮れば。未羽がどんな一瞬を残したかったのか見てみたいけどな。写真っていいよね、一瞬をずっと先まで残せるんだもん。

 

彼女の想いを何とかして矢野先生に伝えたいと思った未羽は、翔平の助言をきっかけに「恋している瞬間」を写真に撮ることにする。彼女が駅で矢野先生を見つめる横顔。

そして、矢野先生の下駄箱にその写真を入れておく。

 

 

「過去を変えたいんじゃないの!ただ知りたいだけ!」とタイムリープしまくり、秘められたままだった恋心を知って勝手にカタチにして矢野先生に見せてしまう未羽は、ある意味でとても残酷だ。あの女の子は本当にそうしてほしかっただろうか。それによって誰かが救われたのだろうか。

残酷だけど、真っ直ぐで無邪気な強さがまぶしくもある。人の、大切な気持ちを知ることを恐れていない。 何かを余分に知るということは、何かを選ぶことにつながるし、それは、つまり何かを選べないということだ。一人の女の子の想いを知ってしまえば、きっと生きててもらいたくなる。でも、その子の命を救って運命を変えてしまったら、心臓移植を受けた西岡君の命が助からない。

知ることを恐れず無邪気にタイムリープしていた未羽は、自転車事故に遭う彼女を助けられない痛みを味わうことで、初めて知ることの重みを実感する。

 

死んでしまうと分かっている人に何もできない無力さ。

未羽がカタチにしたことで矢野先生は救われただろうか。女の子は救われただろうか。 

 

 

でも、未羽の行動に意味がなかったわけじゃない、と思う。

未羽がタイムリープして女の子のことを知っていく過程は、過去の出来事なのに、まるで新しい物語を紡いでいるみたいだった。無数にある過去の瞬間を、切り取って、未羽の視点でつなげる。

祈りとか願いって、普通未来に対してのものだ。でも「思いを伝えないまま死ぬという悲劇」をなんとかして回避したいという、未羽の祈りにも似た気持ちは、もしかすると過去にも通じるのかもしれない。未羽の「こうあってほしい」という視点を通すと、過去の世界がとても美しく愛しいものに思えたからだ。

 

 

 

想いを伝えられる矢野先生役の加藤シゲアキさんは、ご存知の通り小説家でもある。私は『ピンクとグレー』を一年半前に読んだ。友人にすすめられて『傘を持たない蟻たちは』も購入したけれど、まだ読んでいない。(すみません早急に読む)

『ピンクとグレー』はとても好きな作品だった。すでに死んでしまった蓮吾の物語を、河田が紡いで小説や映画というカタチにする話だと思っている。物語を紡いでも、喪った人は戻ってこないし、誰も救えないかもしれない。でもそれでも紡ぎ続ける。無力感に打ちひしがれながら、それでも過去と未来に向けて祈るような作品だと思った。(本当に勝手なことを言っていると思うすみません。でもそんな印象がずっと残っている)

 

 

 

だから、第2話を見て矢野先生を加藤さんが演じることに運命めいたものまで感じてしまった。知ることの痛みを、物語を紡ぐことの痛みを知っている人。過去と未来への祈りと、その無力さと、それでも祈り続ける意味を、知っている人。矢野先生は、彼女の想いを知って救われたのだろうか。

 

 

 

 

 次回(といってももうもうすぐですね)は、文化祭回で「ロミオとジュリエット」やるみたいです。恋をしてはいけない二人の物語。なんですが、なぜか翔平がジュリエット役???矢野先生がパラパラ踊る????毎回、三角関係とは別に深町親子の食事シーンにもときめいてしまうのですが、翔平のお母さんの過去もそろそろ明かされそうですし、最終回の展開にもがっちり絡んできそうですし、楽しみです。

 

第1話のざっくりとした感想。

chocomintholic5.hatenablog.com

 

 エンディングテーマもとても素敵です。

恋を知らない君へ

恋を知らない君へ