大切なものを失うこと/守ること―演劇女子部『続・11人いる!東の地平・西の永遠』を観てきました

二年ほどまえに『リリウム』の話を聞いてからずっと観たかった演劇女子部。今回大好きな萩尾望都先生の『続・11人いる!』の舞台化ということで、ハロオタの妹にお願いしてチケットをとってもらい、一緒に観てきました。

こちらが公式ページ。 http://www.zoku11.com/

 

宇宙規模のお話をどう舞台化するのか、両性雌雄体のフロルがどう演じられるのか、原作ファンとしては不安も大きかったのですが、予想以上に良い舞台だったので、いま泡沫サタデーナイトのPVをかけながら感想書いてます。石田さんPVでは可愛い女の子なのに何度見てもときめくし、工藤さんが映るたびに「…かわいい」って声にでちゃうし、小田さんと譜久村さんが並んでると、あのシーンを思い出して泣ける。

以下、普段はSexyZoneを応援しているジャニオタが書いたものなので、見方がおかしかったり間違っていたりするかもしれません。温かい目で読んでいただければと思います。私が観たのはEAST公演なので、EASTの感想です。

 

もともと原作の『続・11人いる!』は、バセスカがメインの物語なのですが、今回の舞台ではバセスカとフォース、タダとフロルの関係性がクローズアップされていたと思います。原作はこちら。

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

 

 

  • バセスカとフォース

EAST公演で個人的に一番の見どころだったのは、譜久村バセスカと小田フォースの歌の掛け合いのシーン。もう、ここで、めちゃめちゃ泣いた。びっくりするくらい泣いた。

かつて宇宙大学入学試験で苦楽を共にした親友の二人。バセスカが若き王として治める東の国「アリトスカ・レ」と、フォースの故郷である西の国「アリトスカ・ラ」はもともと兄弟国。…だったのですが、伝統ばかり重んじて貧乏になってゆく東の国の行く末を心配したバパ大臣と、アリトスカを狙う隣国ドゥーズの陰謀で、二国の関係は引き裂かれていきます。同時にバセスカとフォースの友情もまた引き裂かれる。

西の国の和平使節団を殺害した濡れ衣を着せられ追われるバセスカ。

家族を人質にとられ、国の名誉を背負わされ、バセスカへの報復を言い渡されるフォース。

「振り向くな」とバセスカに銃を構えながら、「国のため家族のためお前を撃たねばならぬ」という小田フォースの歌には、最初から強い覚悟が滲んでいたように感じられました。選べないものを天秤にかけられ、どんどん追い詰められていったフォース。小田さんの圧倒的な歌唱力が、フォースのそんな覚悟と絶望に説得力を持たせていました。

小田フォースの歌が力強くてエモーショナルだった一方で、「絶対に生きて国に帰らねばならぬ」という譜久村バセスカの歌はどちらかというと感情を抑えた印象。でもだからこそ個人の感情ではなく、マヤ王としての責任と誇りとを背負っている人の誠実な苦悩と静かな覚悟が伝わってきました。後から妹に譜久村さんが今のリーダーなのだと聞いてとても納得。小田さんと譜久村さんの、悲劇の背負い方の対比がとても良かったです。

 

国・家族と親友、どちらも捨てられなかったフォースは、「お互いの国のために戦争を終わらせてくれ」と言い残し、バセスカの目の前で自ら命を絶ってしまいます。親友の命という大切なものを失ったからこそ、バセスカの国を守る決意は一層固くなる。二人がカーテンコールで一緒に登場して、固い握手を交わしたとき、私の涙腺は再び崩壊しました。フォースの魂は、バセスカと一緒にアリトスカを守っていくんだね…泣

自分にとって大切なものを守るためには、何かを選び、何かを失わなくてはならない。でもその喪失こそが、別の大切なものを守るための強さを与えてくれる。原作にも描かれているこのテーマが、二人の歌と演技によって際立っていたように思いました。

 

 

  • タダとフロル

石田タダと工藤フロルも大好きでした。工藤フロルがとにかく可愛い。時に少年の声に、時に少女の声に聞こえる工藤さんの声は、本当に伸びやかで魅力的。原作で大好きだったフロルが、血の通った身体を与えられて目の前で動いているのに感動しました!工藤フロル、まっすぐで気が強くて無邪気で可憐なフロルでした。

この工藤フロルの可愛らしさを引き出しているのは石田タダなのかも、とも思いました。思慮深くて優しいお花の香りがしそうな美少年。石田タダ、線が細くて背も工藤フロルの方が少し高いし、愛してるって全然はっきり言えないんだけど。でもこういう人の横にいたら、まっすぐに幸せに生きられるのかもと思わせる何かが石田タダにはありました。

 

フォースの想いを受け取り、タダ、フロルとともにアリトスカ・レに帰ったバセスカは、バパ大臣の策略により、兄のトマノに王位を譲るための署名を求められます。当然、署名を拒むバセスカ。そこで、もし署名をしなければフロルの指を一本ずつ落としていくと脅される。

ここまでは原作通りなんですが、今回の舞台ではタダがフロルの身代わりを申し出て

「フロルが傷つく必要なんてない!代わりに僕の指を落とせ!」*1

と言うんです。ここで私、石田タダに恋しましたよね。一気に胸が苦しくなった。

これが、タダにとってフロルを愛することなんだと思ってしまって。両性雌雄体のフロルにとって、タダのために女性になることは、大切なもののために別の大切なものを失うことなんですよね。女になる運命に生まれた末っ子フロルは、男になることに憧れて「女になるくらいなら死んだっていい」という覚悟で宇宙大学の試験を受けに来た。でも、そのフロルがタダと出会って女として生きることを選ぶ。つまり男になるという未来を失う。フロルのその喪失の痛みを分かち合うこと。できるならフロルに降り注ぐ痛みを出来るだけ肩代わりすること。原作にはないセリフなのに、タダの愛の深さを感じて泣きそうになりました。

テレパスの才能をもつタダにとって、手指というのは相手の感情を読むための大切な武器。そんな大切なものを、フロルのために失ってもよいとタダがとっさに判断できるのは、すでにフロルが自分のために大切なものを失う覚悟をしているのを感覚的にわかっているからなのかもしれません。腕力で助けられなくても、愛してるって言葉にできなくても、そういう大事なことをちゃんと分かっているタダは本当にかっこよかった。

 

大切なものを守るには、何かを失う覚悟を持たなくてはならない。でも、そんな喪失の痛みを分かち合うことで、きっとそれまでより強くなって、もっと大切なものを愛すことができる。守ることができる。タダ・フロルパートもバセスカ・フォースパートとテーマがつながっていると感じられました。

 

この演劇女子部、カーテンコールで演者が一人だけ代表で挨拶をすることになっているようなのですが、私が入った回は工藤さんの挨拶。ちょっと照れながら「茶髪ロングのかわいい子で検索してもわたし出てこないんです。いつもは黒髪ショートのかわいい子なんです」っていう工藤さん、最後までフロルすぎた。しかも石田さんが「ほんとかわいいよねぇ」ってナチュラルに言って、また工藤さんが照れて。うーん、やっぱり書いてて気づいたけど、私自覚してるより石田タダに恋してるのかもしれません。好きです。

 

勝手なことをいろいろ書きましたが、演劇女子部とてもよかった!ハロや娘のことを全然知らない私でも楽しめました。WEST公演も観たくなったし、次の舞台もぜひ観たいと思いました。ひとつだけ、次回もし戦闘シーンがあるなら、殺陣をもっと美しく見せる工夫をしてくれることに期待。殺陣は舞台の花形だと思ってるので。今回の場合、火消しのレッドを演じる生田さんの殺陣だけ他の子よりもずっと良くて、レッドの次元の違う強さに説得力が出るという効果がありましたが。

 

石田タダと工藤フロルの恋愛にいっぱいときめいて、譜久村バセスカと小田フォースの友情にいっぱい泣きました。ほんと楽しかった!ありがとーーー!!

 

 

 

 

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*1:書いてるうちに本当にこんなセリフ言ってたのか怪しくなってきた…。私の脳内で設定がプラスされてそうで怖い。他のセリフも含め、号泣しながら観た人間の記憶力の限界を感じながらお読みいただければ。すみません。