恋を知らない君へ―『時をかける少女』第1話のはなし

やっと、わたしたちの夏がはじまりましたね。いや、ドラマ『時かける少女』がはじまりました。

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『ごめんね青春!』の委員長役で超かわいい!と思っていた黒島結菜ちゃんが主演。何度も映画化、ドラマ化してきたこの作品ですが、今回のドラマは原作ともこれまでの作品と大きく違う部分があるとのこと。それは、深町翔平(細田版では千昭ポジション)が未来人であるという前提が視聴者に明かされていることです。第一話目は、深町たちが未来からタイムリープしてくるシーンから始まりました。最初から現代を生きるヒロインの視点と未来人の視点が平行して描かれるんですね。

実は私、この構成をとても心配していました。だって大林版も細田版も、ずっと身近にいると思っていた人が実は…って分かる瞬間がクライマックスじゃないですか!!このクライマックス無しの『時かけ』がどうなるのか…。

でも先週、実際に見てみて、未来人の視点で始まる『時かけ』良いじゃん!って素直に思って続きが楽しみです。考えてみれば、アニメ版を何度もテレビで放映済みの今、みんながうっすら分かっていることをラストまで引っ張っても、逆にお茶の間総ツッコミ状態だったかもしれないなと思います。 

 

  • 「恋を知らない君」はだれか 

今回のドラマ、何が良いってNEWSさんの歌うエンディングテーマ『恋を知らない君へ』がとてもよいです。NEWSの加藤シゲアキさんは担任の先生役で登場しています。(ところで加藤さん数学の先生なのなんでですか?個人的には社会がよかった。理系でも物理がいいなー。勝手なイメージです。) 

嗚呼 いかないでと願うだけで

もう一度と願うだけで こんなにも痛いのなら

友達のままでよかったのに

 

翔平はいつかきっと未来に戻ってしまう。残される未羽の切なさをまるごと歌っているような曲です。

嗚呼 あなただけは消えないで 戻れるならあの夏へ

 

今回の『時かけ』、現代人の芳山未羽と未来人の深町翔平の視点を並行して描くことで、二人の対比が鮮やかになっていると思うんですが、実はこの二人、どちらも「恋を知らない」んですよね。

 

「恋」に恋している未羽。「恋」という感情がない未来からきた翔平。

 

この歌詞の「あなただけは消えないで」という言葉がずっと気になっています。普通に読んでいくと、「消えてしまうあなた」も未来に帰る翔平なんだけど、「未来で待ってる」翔平視点で「消えてしまう」のは未羽。「未来」というのがどのくらい先なのかは分かりませんが、タイムリープする薬が開発されているくらいずっとずっと先だから、未羽の生きていた痕跡さえ消えてしまっているかもしれない。

翔平が未来に帰ってしまうとき、翔平が現代で過ごした証拠は、未羽の胸の中にしか残らない一方で、未羽という個人が確かに生きていたという証拠も、翔平の胸の内にしかないのです。

 

  • 知らないから切ない、知っているから切ない

相手が未来に帰ってしまうことを知らないまま、翔平に恋する未羽。

未来に帰らなくてはならないことを知っていて、未羽に恋する翔平。

「知らない」のと「知っている」のは、どっちが切ないんでしょうか。

 

未羽は「別れ」を知らず、翔平は「別れ」を知っている。そして、翔平は「夏」を知らず、未羽は「夏」を知っているんです。

第一話は未来人のシーンから始まると書きましたが、タイムリープしてきた深町翔平ことケン・ソゴルが手にしていたのは、『夏を知らない君へ』というタイトルの写真集。ケン・ソゴルたちが生きる未来は季節がなくて「夏」もないらしい。彼はその写真にうつる「夏」を一つ一つ確かめるために現代に来たのかもしれません。

第一話を見ていて、夏服の眩しさと日に焼けた腕だとか、夏祭りの喧噪と帰り道の静けさだとか、水道の蛇口の鉄の味だとか、学校の屋上の特別感だとか、一つ一つのシーンが「青春」って感じでキラキラしていました。

人が何かに「青春」って名付けるとき、その何かは失われていることが多い気がします。あんなキラキラした「青春」一度も味わったことなんてないのに、どこか懐かしいというか。 ケン・ソゴルが一つ一つ夏を見つけていくように、見ている私たちも一つ一つ「青春」を見つけていくような気分でわくわくできる第一話でした。

 

夏のない世界から来たケン・ソゴルが「夏」に憧れるように、わたしも「青春」や「恋」に憧れながらドラマを楽しみます。自分の青春はこんなにキラキラしてなかったですっていう私のような大人こそ楽しめるドラマなのかもしれません。

ということで今夜も楽しみ!!!

  

 

 

ここからは余談ですが、ヒロインの黒島結菜さんは現在、大学で写真を勉強しているとバラエティ番組でお話ししていたのだけど、もしかするとドラマの役どころを少しキャストに寄せてたりするのかな。ヒロインの未羽は腰を痛めてボート部を辞め、写真をはじめたところ。

だとすると、翔平も菊池風磨くんに少し寄せているんでしょうか。現代に夏を見つけにきた翔平を演じる菊池くんは、もともと夏という季節が好きだと公言していて夏を愛おしむ『 My Lovin' Season』というソロ曲を作詞作曲してしまうほど。

 波の音も 焼けた砂も アルバムに残らない君の声も

何もかもが愛しいから 最後の一秒まで笑ってたいな

思い出にはまだしない My Lovin' Season

このあと、ラップ部分で、こんな箇所もあります。

夏の終わりを知らないわけじゃない 思い出を紡いでも戻れやしない

空に上げて 合図 また花びら舞い 空見上げて 曖昧に語り出すふいに

また来年集いたいなんて 毎年ながらも切なく響く    

ただ今はこのまま暫く 儚く舞う花びらのごとく

潮の香り 星空 つなく手と手ほどいて

地平線 その先 新たな季節へ それぞれ

 

この『My Lovin' Season』はちょうど一年前の2015年7月、SexyZone『Cha-Cha-Chaチャンピオン』のカップリング曲として収録された曲。まるで深町翔平役が決まっていたかのような歌詞なんですよね。菊池くんのソロ曲は最初の『Rouge』(2012年頃)からどの曲も「さよならの時を知っているからこそ、今この時とここにいるあなたが愛しい」というテーマでつながっているように思います。

 

「夏」っていうのは、「終わり」があるからこそ、儚くて美しくて切ない思い出になる。たぶん「青春」も「恋」も。そんな歌をつくっちゃう菊池くんの「恋を知った未来人」の演技もたのしみにしています!!

 

  

深町翔平役の菊池風磨くんのコンサートレポートも良かったら!

chocomintholic5.hatenablog.com

  

時をかける少女 (角川文庫)

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